ひと月ほど経った頃、学校内がまた小夜子の話で持ちきりとなった。
「ねえねえ、お母さんの話だと……」
「ああ、知ってる知ってるう。
小夜子さまのことでしょう? すごいわよね。
知恵熱だなんて、冗談おっしゃってたけど」
「世界のモデルさんですってね? 家族のお約束をされたとか…… 」
「世界中を旅してるんですってね、そのモデルさん。
いいなあ、色んな国に行けるんですものね」
教師間でも、喧々ガクガクの議論となり、退学処分にすべきという意見も出た。
「けしからんです、問題です。嘘を吐いていたわけですから」
「でもまあ、気持ちが分からないわけじゃありません。
アナスターシアと一緒できるなんて、一生に一度あるかない、、、」
「とんでもない! まだ学生ですよ、あの子は。
校内態度も色々問題を抱えていますし」
「先生、それはちょっと。高慢な態度をとりますが、だからといって。
それに今は、いい子ですよ。
そのアナなんとかという女性が、いい刺激になったようですし」
「なによりですなあ、彼のこともありますしなあ。
あちらでは、不問に付するということですし」
「ああ、佐伯正三くんですか」
「先生、名前は出さないように。どうでしょう、先生方。
校長に一任するということで」
と、教頭が話を引き取った。
結局校長采配で、一ヶ月間の停学処分となった。
厳しすぎるという声が生徒の間から上がったが、当の本人は、のほほんとしたもので「丁度いいわよ。あたし、学校やめる」と、まるで意に介さなかった。
その夜、言い渡された処分を、ケロリとした表情で茂作に告げた。