小夜子は、前田が付きっきりでの世話となった。
まったくの素人である小夜子が、破格の待遇を受けている。
付きっきりでの世話など、ありえないことだ。
棘のある視線が、小夜子に注がれる。
「ひょっとしてあの子、マッケンジーの愛人じゃない?」
そんな声すら飛んだ。
「気にしないで、集中してね」
「さあ、いいわよ。目をあけて!」
メークがすんだ己の顔に「ええっ!これが、あたし、ですか?」と、驚嘆の声を上げた。
切れ長に引かれたアイラインが、幻想的な雰囲気を醸し出している。
あの田舎娘の小夜子が、見事に変身を遂げた。
さながら、さなぎから脱皮したアゲハ蝶だった。
一瞬、空気が凍りついた。誰もが目を疑った。
小夜子の起用を決めたマッケンジー一人が、大きく頷いていた。
「ブラボー! ファンタスティックゥ!」
マッケンジーの声に、その場に居るすべてから拍手が起こった。
そしてその拍手が会場に洩れ、なにごとかとどよめいた。
「ミィス、サヨコ嬢の登場です。マッケンジー氏に導かれての、登場です」
アナウンスの声も、震え気味だった。
さすがの小夜子も、緊張のあまり一歩が出せないでいた。
マッケンジーに導かれて、ようやくステージに出た。
口を真一文字に結び、伏目がちにゆっくりと歩いた。
左手を胸の前に立てて、ゆっくりと歩いた。
「オーケー、オーケー”と、マッケンジーが満足げに頷いている。
会場のあちらこちらから感嘆の声が洩れ始め、非難の声をあげていた淑女からも思わず賞賛の声が漏れでた。
「マッケンジーって、凄いわねえ。あんな田舎娘を、こんな美女に変えるんだから」