呼び込みの声が飛び交う中、俺の歩みが少し速くなった。
あの少女が居た交差点が見えてきた。
どんよりとした曇り空のせいか、色褪せて見える。
大勢の信号待ちをしている人の服装が、皆くすんで見える。
目を凝らして捜して見るが、やはりのことにあの少女の姿はない。
気落ちしながらも、とに角ビルの壁際に立つことにした。
流れに逆らうように歩く俺に、視線が痛い。
と、俺の肩を叩くものが居る。
“田坂か…?”
そう思った俺に、突然思いも寄らぬ声が聞こえた。
あの声だ、少女の声だ。
思わず振り返ると、白のタンクトップに白いホットパンツ姿の少女が居た。
くすんだ人の中で、その少女だけは際立っていた。
情けないことに、言葉に詰まってしまった。
茶色に染めた長い髪を風に揺らせながら、少女はつぶらな目を俺に向けている。
ニコニコと俺を見上げている。
“黒子)、そうだ! 黒子はどうした? どこにもないぞ”
怪訝な思いでいる俺の腕を掴むと
「さっ、行こうよ」と、引っ張る。
「や、約束してたかな?」
「いいから、いいから」