[舟のない港](三)歯 | toshichanのブログ

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【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

「うわあ、おじさんの歯ってきれいだネ。あたい、タバコのヤニで黄色くなっていると思ってた。

うちのネ、工場長がそうなんだ。一日にネ、五十本も吸うんだって。おじさんは?」
 男は、その会話の移り変わりの速さに戸惑いながら、
「そうだなあ、二箱だから四十本位かな? タバコのにおいは嫌いかい?」
 と、クルクル回るその目を覗き込んだ。


「うん。工場長のはキライだけど、おじさんのはいいみたい。

タバコがちがうのかな? へへへ。うーんと、なんのはなしだったっけ」
「君の彼氏のことだよ。聞かせて欲しいな」
 男は、深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出した。その煙を、少女は素早く吸い込むと、少しむせびながら
「おいしいね、このけむり」
 と、はにかんだ。


「ハハハ、そうか話したくないのか。それじゃ仕方ない、話題を変えようか」
「いいよ、話しても。おじさんがこのレスカを飲んだら、話してあげる」
 悪戯っぽく鼻に小じわを寄せて笑うと、レモンスカッシュを男の元に押しやった。
「わかった、わかった。それじゃ頂くとしよう、ありがたく。お嬢さん」


 男は、少女の口紅がついたストローを口に含み、勢い良く吸い込んだ。

レモンの香と共に、まだあどけない処女の酸っぱさを喉に感じた。
「さあこれで、おじさんとあたいはギキョーダイだよ。

でも、あたいは女だから、ぎ、ぎ‥どう言えばいいの?」

  どうしても、男と特別の間柄だと決めつけたい思いにかられている。見知らぬ男にのこのことついて行くなど、少女には思いも寄らぬことだ。