アブラ・カタブラ ! (三) | toshichanのブログ

toshichanのブログ

【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

「名古屋あ、名古屋でえす」
 アナウンスが流れると同時に、トンネルに電車が入った。わたしの手を握る息子の力が突如強くなった。


「パパ、パパ」
 小声で呼びかけてくる。


腰をかがめて耳を近づけると
「じごくだね、じごくにはいったんだね。ママがいった。じごくはくらいんだって」
 と、怯えた声を出す。


無理もない。地下を通る電車は初めての経験なのだ。

人一倍怖がりの息子は、いきなり暗闇に放り込まれてパニックになったのだろう。


「大丈夫、すぐに明るくなるから」
 告げた途端に、明るいホームに滑り込んだ。しかし息子の手の力は弱まらない。


「パパ。ひとがいっぱいいるね」
 名古屋駅に降り立った息子の第一声だ。

嬉々としてエスカレーターに乗った息子だったが、その人混みに圧倒されて抱っこをせがんできた。


 久しぶりの名古屋だ。東山動植物園には、確か父親に連れてこられた記憶がある。

ひょっとして、息子ぐらいの年齢だったかもしれない。


 地下鉄東山線で、東山駅で降りると良いと聞かされた。

通路を見渡し、標示灯の中に見つけた。


不安げに見上げている息子に

「さあ、行くぞ」

と、笑いかけた。