(七十七)
「お待たせ、お婆ちゃん」
「早よして貰わんと、どうにもならんぞ。
みんなでお昼を食べることになっちょるのに」
何という毒々しい言葉を吐く婆ぁだ。
ひょっとして、先ほどのわたしを陥れようとした老婆か?
目を開けることができたなら、ジロリと睨み付けてやるものを。
「こんなに度の強いコンタクトって……」
「ごめんなさい。お友だちのレンズを、ちょっと借りてます。
黒板の文字が見にくくて。
前の方の席に行くの、嫌だったから…」
医者の言うことを聞かぬ小娘め、私の娘なら怒鳴りつけてやるものを。
少しは医者に対する畏敬の念を持てないものか。
憤慨するわたしだったが、まさかこの後にあのようなことになるとは、思いも寄らぬことだった。