[来訪者](六)
しかし、しかしだ。
ひとつ、問題がある。
自己の確認だ。
誰も彼のことを知らないわけだ。
当たり前だ、突然現れたわけだから。
彼の過去は、今の『他人の顔』の過去じゃないんだ。
そしてその内、彼自身が何者なのか分からなくなってしまう。
勿論名前もあるし、本質的には変わってはいない。
だけど、その証明ができない。
人間の証明は、結局『顔』だからね。
有り余る自由を手に入れたが為に、自己の確認をする術を失ってしまったわけだ。
人間というもの、所詮、他人あってのものか?」