年老いた男が訥々と語る、「男親と娘」のお話。
ある葬儀の席に現れた老人。
ざわつく場を後目に、じろりと一瞥して……。
喪主を押しのけて、鬼気迫る表情を見せながら話し始めた。
疑念を呼び起こす、愛の炎。
今宵あなたを、地獄へご招待します。
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(伍)の九
「清子に婿を取って、この家を継がせればいい。」
というのが、大木様のお考えのようでございます。
しかしいくら大木家と言いましても、正直あの清子さまでは……。
器量は、はっきり申しまして妻の足元にも及びませんです。
まあそれより何より、足がお悪いのですよ。
足を引きずって歩かれる姿は、好奇の目にさらされておられます。
で必然、外出なさることもなく、日がな一日お部屋の窓辺にお座りでございます。
実はわたくしめの部屋が、清子さんの窓から丸見えでございまして。
夏の暑い夜には窓を開け放しておりますので、寝姿を見られてしまいます。
申又一枚で寝ておりますわたくしでございます。
初めの内こそカーテンの陰からこっそりと覗かれていた清子さんでしたが、
ある日のことでございます。
庭先でひと休みしておりましたわたくしめに
「お腹を冷やさないの?」
と、声をかけてくださいました。
そしてまた
「肌が白いのね、女の人みたい。」
と、悪戯っぽく笑いかけてもくださいました。