年老いた男が訥々と語る、「男親と娘」のお話。
ある葬儀の席に現れた老人。
ざわつく場を後目に、じろりと一瞥して……。
喪主を押しのけて、鬼気迫る表情を見せながら話し始めた。
疑念を呼び起こす、愛の炎。
今宵あなたを、地獄へご招待します。
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(壱)の 三
笑い声が収まると同時に、座がざわつき始めました。
それはそうです、坂田家の七回忌法要で集まった親戚一同でございますから。
このご老人、誰一人として存知おりませんのでございます。
しかしご老人はまるで意に介されずに、ひと通り見渡されます。
そしてその後、かっと目を見開かれて、怒鳴るようにおっしゃるのです。
「本日は、わたくしめの愛娘、小夜子の法事でございます。」
キョロキョロと辺りを見回し、坂田松太郎七回忌法要の文字を見つけられると、満足そうに頷かれるのです。
「七回忌、七回忌ですぞ。
かくも賑々しくお集まりいただいて、わたくし感極まる思いでございます。」
そこまでおっしゃられると、目頭をおさえられ声をひそめられました。
「ご老人! 梅村さんとか、言われましたか?
ここは、坂田松太郎の法要の場ですが。
何か思い違いをなされているのではありませんかな?」
大叔父の善三さんが、声を上げられました。
皆一斉に、善三さんに視線を注ぎます。
そして、うんうんと頷かれます。