統合失調症の人にとって,記憶の問題はけっこうわりと重要なのではと思います.
記憶を失ってしまったり,ある期間ぽっかり覚えていなかったり,
写真的な記憶を一連の動画のように構成できなかったりしませんか.
私はもともと発達障がい(アスペ)の人なのですが,
ティーンズのときの心の負担が大きく,
18歳で脳を壊してしまい,21歳のとき統合失調症で入院しました.
昔の分類ではいわゆる破瓜型(解体型)です.
なので,両方が重なった特徴をもって生きています.
周りからは,個性的で才能の塊だとよく言われますが,
それが少しも楽しくないのです.
なぜかといえば,記憶がまともになくて,
特に,思い出と言えるものがないのです.
思い出の重要性に気づいたのは,
教会で出会ったある老年の男性でした.
80代でしたが,私を車で食事や買い物に毎週誘ってくれました.
合唱の経験があり,私をなんと市民合唱団に入れるべく,
練習を組み,結果,オーディションに合格し,
3年余りの合唱経験を積ませてもらいました.
この方は1年半前に召天してしまいましたが,
私の人生を決定的に好転させてくれた方です.
その方が,いつも私に語ってくれたのは,
幼少時代や青春期や現役時代の思い出でした.
彼はひたすら過去の思い出を参照し,その幸福に浸っていました.
ある人が言うには,過去から抜け出せない老年者
と見る人もいましたが,
私には,思い出こそ人生の最後に残る唯一のものだ
と映りました.
思い出から無限に幸福を汲み出せるのだ
とも思いました.
それから半年,私は自分に思い出がないことに気づきました.
思い出そうとしても,何もなかった.
そこで,広島,沖縄,山陰に続けて旅をしました.
すると,意外にも思い出すことができるようになり,
その関連でか,昔の思い出もいくつも蘇ってきました.
この部録を始められたのも,その旅行での回復によります.
統合失調症の回復にとって,思い出すことは重要だと思います.
今週も,仕事終わりに和食を食べに行ったり,
美術館へ行ったり,中華を食べに行きました.
やはり,思い出せる量は日に日に増えています.
なんだか豊かな気持ちになってきました.
統合失調症で服薬していると,
気分が安定していても記憶が消えていることは普通にあると思います.
私は寛解して3年になります.
そろそろ,自己管理できるようになっています.
その方法のひとつとして,思い出を作る方法で
自分を訓練していきたいと思います.
今は,前よりも生きている感じがします.
少しずつ,健常者と同じような心を持てたらと思います.
健常者が当たり前のように持っている心.
これが,統合失調症と格闘してきた私の当座の目標です.