バスタブの戯れは、少なくても彼には快適で楽しい時間だった。

バスジェルの滑らかな感じが、彼女にとても優しい心地よさを与え

そして、そのお返しの様に彼女も様々な方法で彼を楽しませた。

そして、その後はバスルームの時間を中断することなく窓側のベッドに場所を換えた快適な時間を楽しんだ。

窓の外から吹き込む穏やかな風を肩から上のブランケットから出ている部分に感じながら二人は今

静かな時間を過ごしていた。

「この快適なお部屋はとても気に入ったわ」

彼女はそう言って、空を反転させ丁度彼の上に覆いかぶさった。

「君が喜んでくれたのなら、僕もとてもうれしい」

彼が言った。

「私は、今夜これからお友達と外で会う約束があるのよ」

「そうだったね さっき聞いた」

「だから暫くしたらここを出て行かなければならないのよ」

「気にすることは無い」

「でもこのベッドで今夜は眠れたらとても良いと思うのよ」

彼女は言った。

「聞いてもいいだろうか」

「いいわよ」


「君が今夜ここで眠りたいと言った理由は この部屋が気に入ったからなのか」

「そう このお部屋とこのベッドがとても気に入ったのよ。」

「それは解った、そして今夜その君の快適な眠りに僕が寄り添うとしたらどうだろう」

「寄り添いたいのかしら」

「寄り添いたい」

「それなら・・」

言いかけた彼女を彼は止めた

「また、難題をぶつけて、それが出来たらなんて言い出すんじゃないだろうね」

「あら お気にめさない」

「悪くはないけれどね 最近何かと課題が多いんだ その手のね」

彼は笑顔で答えた。

彼女は

「じゃ課題は無し 私は貴方が居てくれても良いと思っているの」

「それはうれしいね」


彼は、ベッドから出るとバスルームでシャワーを浴びた。

シャツを着て支度を整えて、ベッドに居る彼女にルームキーを渡した。

「君が気に入ってくれてよかった、部屋は君の好きな様にね」

「もう行くのね、それじゃ一つ聞いていいかしら 真夜中に会いたくなったら」

「電話してくれて構わない それと、この部屋は東京太郎でおさえたことを忘れない様に」

彼女は目を一度だけ閉じてあけた 解ったという意味だった。


彼は少し重いドアを開けて廊下に出た。

そしてエレベーターを使いロビーのあるフロアに降りた。

支払いを済ませ、連れが翌朝チェックインすると告げた。

ホテルマンは笑顔で頷き、かれの礼を言って送り出した。

彼はそのまま、迎えの自分のホテルの敷地に入り、ロビーのパブリックフォンでメモした侑子の泊まっているホテルの番号に電話をした。日本からのゲストでこの女性は居るかと訪ねた。

オペレーターは彼女が泊まっていることと、部屋に繋ぐという事を告げた。

数回のコールの後で彼女が出た。

「僕だ」

「おひさしぶり」

彼女が言った

「フィレンツエ以来だからもう24時間になるね」

「電話があるならこのタイミングだと思って、お部屋に居たのよ」

「君はいつも完璧だ このタイミングで電話をしたのは僕だ、食事に行こう」

「私の予定も聞かないで いきなり食事に行こう と言うのね」

「食事に行こう 君が部屋に居てくれたのだからお礼をしなくてはいけない 食事に行こう」

「何処に行けば良いの」

「コロッセオの近くの居酒屋だ」

「え・ 支倉?」

「そう」

彼女は笑いながら解ったと告げ1時間後に会うことにした。

かれは、支倉に電話を入れ玄関からタクシーに乗り、行先をボルゲーゼと告げた。

道はやはり少し混んでいたが、20分かからずに公園の先にある彼女のホテルに付いた。

暫くすると、ホテルから彼女が出てきたので呼び止めて待たせていたタクシーに乗った。

「お店で待ち合わせだったでしょ」

「待ちきれ無くてね」

「何処から来たの」

「アメ大の近くさ」

「まあ」

と彼女は言った

ワンピースにジャケットの彼女はとて綺麗に見えた。

「綺麗だ 直ぐに服を脱いで抱き合いたいくらいだ」

「あの 冗談もほどほどにしなさいよね 服を脱ぐのは勝手だけれど 捕まるわよ それに、間違っても抱き合うわけないでしょ、それは貴方が勝手に私を襲う事にしかならないのよ いずれにしても捕まるわよ 貴方はね」

「なるほど、確かに そりゃ捕まるわ・・・・」

ドライバーが日本語が解らないと思って二人は日本のタクシーでは絶対に出来ない話を続けた。

タクシーが目指す店の前に着いた。

支払いをして、タクシーを降り、目の前の店に入った。

店は適度な客入りだった。

狭い店内に4人掛けのテーブルが平然と並んでいた。

二人は店の中ほどのテーブルに落ち着いた、海外の日本料理屋によくある元気な挨拶に迎えられ、

ビールと刺身で乾杯した。


煮つけに、フライ、サラダ 本当の居酒屋メニューを二人は食べ、日本酒を飲みそして笑った。

まるで、二人の間には何も無かった様に、ふざけ合い笑った。

適度に飲んで食べた後、二人は店を後にしてタクシーでトラステベレへ

間口が大きなオープンスペースになったピッッエリアでワインンを飲んだ。

暗闇の中に店みせのオレンジの灯がともる。

ここでも、二人は良く喋った、けれど、お互いの話は何一つひないまま。

楽しい話題を見つけては喋った。


やがて時間は深夜になり、彼は彼女の泊まるホテルへとタクシーを回した。

楽し時間を過ごしたにも関わらず、二人が埋めなければならないもの、埋めてはならないと納得すべきものは何一つ解決せずに、彼は彼女を送り届ける。

小さなホテルは灯を落とし、入り口のみに小さな灯がともっていた。

「楽しかった おやすみ」

と告げた彼の手を彼女が掴んだ。

ふと覗いた彼女の顔が涙で濡れていた。

彼は、タクシーに戻り、支払いをして帰した。

彼女は無言で彼の手を引いてホテルの中へと入った。

入りの右に無人のフロントデスクがあり、その奥にエレベーターがある。

ふたりはエレベーターで4階に上がり、彼女は3つ目の木の重厚なドアを開けた。

部屋に入るなり、彼女は声を上げて泣き

彼のシャツの胸元を濡らした

彼は、ためらいながら彼女の細い体を抱きしめた。


やがて、ベッドに倒れ込んだ彼女が短く言った。


「もし 私を今 抱きたいのならば ワカレテ オクサント」


泣きながら彼女は言った