彼女は、ウエイターに微笑むと席を立った。

周囲には仕事関係の人だろうかテーブルを囲んでいた。

その中の一人に中座することを告げて彼女は彼の居る方に歩いた。


彼は周囲を見計らいレストランを出ると、ホテルのロビーのソファーに彼女を導いた。

二人は、3度目の偶然のには触れずに見つめ合った。

そして、彼にだけ聞こえる様に「ベバリーヒルズ」とだけ告げた。


そして今度は普通の声で

「本当に久しぶりだわ 変わっては・・・」

と言いながら彼を見て

「変わってはいないわ」

と言った。

「私は変わったかしら」

という彼女に

「どうだろうか、見た目には変わりはない けれど」

と言った。

彼女はレストランに戻らなくてならいと告げ

彼は頷いた

そして、彼女は一度だけ振り向き来た通路を戻っていった。

先ほど、広場で彼女を見送った後姿とは少し違って見えた


彼はそのまま川沿いを歩いた。

そして街の外れでタクシーを拾い車を止めてあるホテルの名をドライバーに告げた。


タクシーは旧市街からアウトストラーダの走る郊外へと進んだ。

酔いが戻るとともに急に眠さがこみ上げてきた。


ホテルに着いた彼はドライバーに料金とチップを支払ホテルの建物に入った。

既に時間は6時を過ぎていたが、周囲は未だ明るかった。

彼はフロントで部屋を取った。

泊まるつもりはないが、酔ったので少し眠ることにした。

部屋は3階だった、エレベーターホールから部屋まではごく近かった。

部屋は適度な広さの極平凡なツインだ。

彼はシャワーを浴びるために服を脱いでバスルームに入った。

シャワーブースのバルブを開くと強烈な勢いで水が吹き出し、すぐにお湯に変わった。

石灰の香りのする水と湯気がバスルームを満たす。

彼は頭から熱いシャワーを浴びた。


暗闇の中で彼は目を覚ました。

サイドテーブルのデジタル時計は深夜前の時間を映している。

彼は、バスルームに入り歯を磨いた。

酔いはすっかり抜けていた。

リフリーズからミネラルウォーターを出して飲んだ。


30分後 彼は深夜のアウトストラーダをローマに向けて走った。

道は快適に空いていた。

フィレンツェを出て丁度2時間30分でローマ郊外の料金所のゲートを超えた。

アルファのストロークを感じる4気筒の適度に回した時の感じを楽しみながら

彼は、午前2時過ぎにローマの城壁を内側に抜けた。

リパブリカまで来て、車を止めた。

路上に駐車したまま彼は目の前のバールに入りエスプレッソを飲んだ。

そこには、フィレンッエとは違う時間が流れていた。

彼はバールで電話帳を借りると、ベバリーヒルズという名のホテルを探した。

グランド ホテル ベバリーヒルズ そのホテルはすぐに見つかった。

そのホテルの番号をメモして礼を言って電話帳を帰したす。

宿泊者の中に彼女の名前があるかを確認しようとかと思ったが、深夜も深夜なので彼はそれをやめた。


バールを出て車に入った

オレンジ光がローマの街の色だと彼は感じた

街がどこもオレンジの深い色の中に沈んでいた

彼は、深夜のテルミニの前をかなりのスピードのアルファで駆け抜けた。