彼女の背中を見送ったのは
丁度彼女がウフィツイの建物の入り口の前まで来たところだった、
不意に建物から吐き出されるように、ポールの先に造花を付けたものを手にしたツアコンの様な女性に先導された日本人のグループに遮られて、その背中が見えなくなったからだ。
彼は、同じ国の人間たちに少しだけ腹が立つのを感じた。
旗持ちの集団でなければ、何処にも行く事が出来ないくせに、集団で居る時のあの傍若無人な態度には流石に閉口せざる得ないと。
いずれにしても、彼女は行ってしまった。
今度めぐり合う偶然を口にして
それにしても、随分上出来な言い訳をしたと彼は思った
彼女にしては出来過ぎた台詞だと
2度の偶然を3度目にかけて
彼は彼女が行きそうな場所を考えていた
この方向、彼女がフィレッエに居るのはおそらくはビジネス
一緒に居たのは、日本人数名とローカルが数名
観光であるはずがない
ただこの街は、観光とビジネスが場所的にはまるっきりリンクしている。
でも、この時間に川に向かう理由は・・・・・
彼は思いめぐらしながら、それがとても意味のない事だと思い、考えるのを止めた。
考えていない、偶然が2度重なったのだから、3度目は無いだろう
仮に、あるとしたらそれは、考えもつかない偶然なくてはならない。
彼は広場の空を見上げた。
待ち合わせの時間にはまだ数時間残っている。
シエスタ明けのこの時間を彼は考えた
彼は彼女を追うのでもなく、彼女が歩いた道を歩いた。
突き当たりを右に折れ川沿いを歩く