A WAY ALL THE BOATS 邦題 全艦発進せよ



1956年制作のアメリア映画を思い出す。

勿論 生まれる前の作品で昭和で言えば31年

こんな古い映画には、なぜか印象的な台詞がある

太平洋戦争時の合衆国海軍 上陸用舟艇母艦が物語の中心となる。

日本軍の攻撃に晒されて「何で俺の艦ばかりに突っ込んで来るんだ」という台詞がある。

戦後の直ぐのアメリカ映画なのだけれど、何処かで戦争の愚かさを やんわり伝える。

あの時代の映画には、どこかアメリカの国策映画でありながら、製作側の思いが本当に隠れて入っていて面白い。今の世の中でメッセージ色の前面に出た映画よりも、逆に心に響いたりする

用は、見る側に要求するものが 物凄く少ないようで 実は多いから面白い。


話の導入は映画だったが今日の話は全く違う。


昨夜、酒を飲んで帰宅しようと最寄の駅を降りた。

地下鉄の出口から、歩道に出る。

幹線道路同士が交差する場所、片側2車線の道路が交差する。

この交差点はスクランブルになっておらず、それぞれの信号が交互に変わる。

渡ろうとする信号は赤だった。

信号待ちの人は深夜に近いにも関わらず多い。

車の量もピーク時のそれからは遥かに少ないが、それでもかなりの台数が行き交う。


見ると対面にも信号を待つ人が多い。

その中から若い女性が車道にふらふらとでて来た。

以前信号は赤 信号無視だ 幸い対岸の車線は車列が途絶えて女性は中央分離帯までゆっくりと辿り付く。

そこで、女性は一瞬歩を止めた様に見えた。


信号無視をしても渡れたのはそこまでで、逆車線は車の通行も多く足止めは必死。

案の定、交差点に入る車列が近づき先頭は良く見る黄色に赤の塗装を施した会社のタクシーだった。


再び女性を見る、流石に中央分離帯付近で待機  と思った次の瞬間 ふらふらと歩き出す


これはまずい  と感じた やがてタクシーはブレーキを余儀なくされるだろうと車列を見る


タクシーは速度を落とさない、ブレーキを踏む雰囲気は皆無だ


ぶつかる


そう思った瞬間に僕は目を覆った 自らの手で


走り去るタクシーの音 鈍い衝突音


タクシーは止まり 先ほどの女性は路上に横たわる


動かない


救急車   咄嗟に 119を携帯で押す と 同く携帯で連絡する人が回りに見える


隣の女性の携帯が通じたらしく話し出す。 


目の前の交番に駆け込むタクシードライバー


出てくる警官 偶然通りかかったパトカー


現場は事故現場に化す


倒れた女性に駆け寄る 若者  大丈夫ですかと揺り起こそうとする。


意識は無い女性、不用意に揺り動かす事は何より危険だと感じた


こんな時 知識の伴わない親切心は迷惑だ


それで奪われる命があるとしたら本末転倒・・・などと考えがよぎる


出て行って、触るな と叫ぼうかと 思った....


 いや 所詮俺も素人だ やめておこう



最先端医療の大学病院に囲まれた一角


救急車の発進する消防署も目と鼻の先だ


救急車の咆哮が聞こえる


警察も、怪我人に不用意に接する事は無い


女性に対する最善の方法は救急隊の到着を見守ること、到着は直ぐだ。


目撃者を集める警官 直ぐに数名の男女が名乗りを上げる。


僕がそれに加わる必要はなさそうだ。


まして、アルコールの入ったものの目撃証言など意味が無い。


女性の叫び声が聞こえた が 声の主はわからない 


僕が家に帰るには、倒れる女性の真横を通っていかねばならない。


信号が青になり僕は道を渡る。


女性の真横に来た時に倒れる姿を見た。


見る限りでは、出血は無い 顔色 肌色は幾分白いと感じた 


ふと気付くと信号が赤に変わっていた


僕は慌てて道を渡る 危うくこちらが事故になるところだったさ


野次馬にもなりたくはない 家に向った


携帯119発信記録 から 時刻は9月14日 22:48 の事故だ。


女性が何故信号無視したのかは 本人しか解からない


酔っていた 急いでいた 考え事をしていた そして・・・・


ドライバーがブレーキをかけなかった理由もドライバーにしかわからない


見落としたのか まさか出てくるとは思わなかったのか 見えなかったのか そして実はブレーキはかけていた・・・・


僕が見たのは、これが総てだ


必要なら証言をしよう ただし 酒を飲んだ中年男の証言が何処まで正しいかはわからない