午前の陽光が海原を輝かせていた。フェリーは低い機械の音を微かに船内にさせながら進んで行く。
コーヒは船内売店の味に相応しいものだった。
彼は海へ向かい伸びをした。「さすがに寝不足だ」
と笑う。
彼女はコーヒーを飲みながら彼の仕草を見ていた。
そして、唐突に…
「お別れしてほしいの」
と言った。
彼は幸いにも、それを冷静に聞き漏らすことなく聞いた。
「いいよ」
そう、驚きも見せずに彼女に言った。
「ありがとう」
と彼女は言った。

「いつ、別れようか」
彼が言った。
それに対して彼女は「貴方が良いようで構わないのよ。 今ここでと言われれば、私はうけいれるし、仮にしばらく後でと言われてもその時でいいのよ。 ただ、来週 日本を離れた時に私は貴方の恋人ではいけないのよ。」
彼はそれを聞いて
「考えさせて欲しい」
と言い、彼女は頷いた。
カモメが飛んでいた。
岸からは遠いのにカモメは一羽で船の横を並んで飛んだ。
彼はそれを見た
そして、売店で二杯目のコーヒを2つ 彼女に1つを渡した。

静な時が流れ、彼は目を閉じた。
彼女は彼を見た。眠ってしまったのかもしれないと思った。
二人の付き合いは長い、彼女は彼が問題に直面した時に見せる癖を今までに何度も見てきた。それは2人の問題であったこともあれば、彼だけの問題の時もあった。
彼は悩み事に直面すると先ず眠る そして目を覚ました時に何かの答を見つける、いつもそうしていた。
彼女はそんな彼を、何処か懐かしさと切なさの中で見た。
彼女はコーヒを飲みながら、彼のコーヒのカップから湯気が消えるのを見た。

やがて
彼が目を開けた
彼女は彼の目の前に居た
「きめたよ」彼が言い
彼女は頷いた
「僕の好きにするね、君が言った事に従い僕は君が旅立つまで恋人でいる、そうきめた」
彼女は先程と同じように頷いた。
少しだけ笑顔で。

船は着岸の準備に入った。