ローマに滞在した時の話だ

仕事だったので、優雅さの無い旅

郊外のホテルに部屋をとり仕事はローマ市内

ホテル代はとても安かったが、市内まで毎日のタクシー代は宿泊費とたいして変わらない。

まったく、なんでこんな効率の悪い手配をしたのか腹立たしかった。

早速、部屋を引き払い自分勝手にホテルを変えた。

テルミニの横を少し歩いたところにある小さな三ツ星ホテルだ。


仕事がかたずくと、いつも夕方遅い時間だった。

一人での晩飯がとても好きだった。

仕事仲間と行くのも悪くないのだけれど、それだと夜が長くなる。

食事、酒、の見直して酒、深夜のピッツア 記憶の薄れた酔いのまわった状況でトラス・テベレを歩くのは気持ちがいいけれど、翌日はつらい。

ましてや、危険もある。


滞在の後半は一人での食事が多かった。

ローマの冬

日本食屋で熱燗というのも良かったが、それも飽きた

結局は、バールの様なビストロで一人酒が快適だと言う事で落ち着いた。

リパブリカの傍らにある古い店だった、小さくも大きくもない店がお気に入りだった。

毎晩 同じ時間に一人で来る日本人に、店の親父は怪訝な顔をしていたが、それも最初だけだった。

必要以上に介入はしないけれど、さりげないもてなしを僕はやがて受ける関係になった。

オリーブの香りが爽やかなマリネ

燻製の魚

ブルスケッタやパルメージャーノのブロック

些細なつまみを、親父は笑顔で振舞っては、最初の一杯だけを注いでは、ボトルごと置いて行く。

外の寒さが、店の温かさと、何故か高めの湿度で別の空間に感じられる。

僕は毎晩、ボトル1本のワインを楽しみながら食事をした。

親父とのコミュニケーション イタリア語が出来たらと 毎回それだけを痛烈に感じたが、

注文程度しか出来ない日本人が、毎晩 親父の店での食事が楽しいのは、既に言語を超えたコミュニケーションが出来ていたからかもしれない。


この店の味、不思議なくらいに美味いカプレーゼ

トマト と オイル に 少しのハーブ 過去これほどに 素朴で これほどに美味いカプレーゼは知らない