店のオーナーがこの日、僕らのために用意してくれたメニュー。

この夜、僕らがゆっくりと時間をかけて食事を楽しむのとは少し違う事を解ってくれていたのか料理は1プレート&スープという感じにしてくれた。

ガスパチョに似た作りで、それでいて少しこくのある冷製スープ、これもタパスを思わせるような雰囲気のプレートには、この日オーナーがお勧めと言っていた鴨のローストを中心に、鴨のレバパテ、大粒のオリーブ、鰯のまりね、そしてアボガドとポーチどエッグのサラダ等が綺麗に盛られていた。

どちらかといえば、ペリエでそれらをやっつけるのが味気ないと感じるくらいワインとの相性がとてもいいものばかりだった。

ま、侑子にはオーナーがハウスボトルからタイミング良く数種のワインを出してくれたけれど・・・

オーナーはグラスを代える度にテーブルに来ては侑子と短い会話を交わした。

その会話は、彼女が喜びそうな話、僕を女2人で皮肉るそんな微笑ましい話題で、侑子を解しながら

「料理はどれもとても美味しいわ そして、ワインもとてもお料理に合ってる」

「だろ、ここは毎週の様に来ているけれど飽きないんだ」

「誰と来るのかしら」

侑子が聞いた

「本当は君が良いのだけれど、なかなかそうもいかないから、そうだね色んな相手と来る」

「その人は、私にとっては心配の種になる女の人なのかしら」

笑顔の侑子は目はだけ真面目だった

「そう 脅威に感じてくれれば 嬉しいかもしれないな」

「そう・・・・」


「半分以上冗談だよ ここには一人でも来るし男同士で来る事も多い 女性と言っても恋愛の類じゃないから」


「遠距離なんでしょ、彼はここに来て良く、貴女の事を私に話しているのよ」

タイミング良くオーナーが現れた。

「私のこと?」

「そう 何でも最近は珍しく恋に落ちたと言っては 私を相手に色々放してるのよ 寂しいそうに」

「寂しい」

「この 彼 こうみえて寂しがりやさん いたいね・・・」オーナーが笑いながらテーブルを離れた。


「寂しいんだ?」 侑子が聞いた

「寂しい 間違いなく 君が居ない時はいつもそうだ」

少し、間をおいて侑子が言った


「キス  したいね」


テーブルには仕上げのエスプレッソが運ばれてきた。



『写真はまるで無関係』



molt posso 追従できない放物線の裏側へ