エレベーターを降りて円形の広い空間に出た。

「少しだけ待っていて」

そう侑子に伝えた僕は、今しがた降りてきたエレベーターとは反対の方向にある隣接するショッピングセンターとの間にあるエレベーターに乗った。

4階ので降りて青いカーペット張りの通路を進む、しばらく歩くと防火壁がありその先は駐車場のスペースだ。

コンクリートを打ち放しただけの床にローファーの踵がなった。

車は比較的近いスペースに駐車しある。

ドアを開けて車に乗り込む、助手席に置いてあった書類の入ったケースを無造作に後部座席に投げエンジンをかけた。

アイドリングは800で安定している、水温が未だ低いが問題は無い。

オートマチックのセレクターの溝が階段状に切られたそれをドライブの位置に入れると小さなショックとともにアイドリングが少しだけ下がる。

パーキングブレーキを戻して、右足のブレーキの力を緩めると車は少しだけ動き出した。

アクセルに足をおき少しだけ踏んだ、車は緩やかに駐車スペースを離れ螺旋状のスロープへと向かう。

パワーステアリングの油圧ポンプが微かな音をたてた。

螺旋のスロープを1階まで降りて駐車料金を自動清算機で支払った。

外はもうすっかりと夜の景色をしていた。

外周の道路から信号を一つだけやり過ごして左折した所がホテルの正面入り口になっていた。

出てきたベルマンに直ぐに人をピックアップして出かける旨を伝えると、正面に停めて言いと言う。

僕はエンジンをかけたままで、ホテルの建物に入った。

先ほどの回廊まで行き、彼女を探した。

侑子はロビーに座ることもなく、僕が離れた時と同じ場所に立っていた。

「車を取ってきた、これから出かけよう。」

彼女は小さく頷きながら、僕に促されるままに歩いた。

先ほどのドアマンが僕らを見つけた。

このホテルには珍しい事にドアマンが助手席側のドアを開いた。

僕は自ら運転席側のドアを開いて乗り込んだ時に、彼女助手席に座った。

「お気を付けて」

そう言ってドアマンがドアを閉めた。

僕はホテルから車をスタートさせた。

駅前の国道に出たところで彼女に聞いた。

「大丈夫、もう乾いた頃かな」

「そんな事・・・・」と彼女が言った。

僕は彼女のスカートに包まれた膝に左手で触れて、その手をセレクターレバーに戻した。

時計は20:30を表示していた。

「もうこんな時間になってしまったね、軽い食事でもしよう」

彼女は答えないまま頷いた。

三ツ沢から横浜市内へと車を走らせ、山下町の外れにあるビストロへ車を走らせた。

店の3台分ある駐車スペースには1台だけ車が停めてあった。

空いたスペースに車を入れると店に入った。

入り口のドアを開くとキャッシャーと小さなスペースがあり、そこから左側に3段ほどの階段があった。

階段を下りると、落ち着いたオイル曳きのフロアに丸いテーブルと椅子が数セット並んでいた。

それらの席の左側にはカウンターがしつらえてあるが、そこには椅子はなく料理出しのために使われていた。

店の一番奥には1台のスタンウェイがあるが今は演奏されていない。

顔見知りの店のオーナーは女性で50に近い、彼女に案内されて置くから2つ目のテーブルに座った。


「今日はお仕事の帰り」微かな微笑みとともにオーナーが尋ねてきた。

「今日は名古屋からの彼女と久しぶりの再会、セックスの後の食事という訳」

僕は周囲に聞かれないほどの声で言った。

「まあ呆れた、そんな事 露骨に言うものじゃないのよ  たとえそうだとしてもね」

と言って微笑みながら「恋人は考えて選びなさいね」と今度は彼女に囁いた。


「軽く食事がしたいので お任せでお願いします。」

僕はそんな、曖昧な注文をしたが、オーナーは勝手しったりと頷いた。

飲み物は、彼女がキールを僕はガス入りのミネラルウォーターを注文した。


オーナーがテーブルから離れると、別の店の子が飲み物を運んでさった。


「先月以来の久しぶりの2人に乾杯」 僕らは小さくグラスを合わせた。



写真は最近 HP上で見つけた素敵な写真を



molt posso 追従できない放物線の裏側へ