マンションのエントランスを出て地下鉄の入り口まで、夏の日差しに照らされる街路樹は青々と言うよりはむしろ暑さのために褐色がかっていた。
何処か道路から立ち上る空気も陽炎のようにゆらいで見える。
朝、まだ8時には少し間があるほどのこの時間帯、彼女は今日の仕事場となる日比谷のホテルへ地下鉄で出かけるところだ。
手には今日の仕事で使うスーツとパンプスを機能的に収納した衣装ケースと、必要なものがまとめて入っている普段使いのバックを持っていた。
そして、今の彼女は極めてカジュアルなコットンのワンピースに夏のサンダルを履いていた。
サンダルが歩道のアスファルトで立てる音も、暑さのためかいつもよりは柔らかい音になっていた。
地下鉄への階段を3段ほど下りたところで、メールの着信を知らせる音がした。
けれど、彼女は携帯を見ることなく階段を降りた。
自動改札を通りホームに降りると、そこはエアコンのおかげで随分涼しく、人影もまばらだった。
暫くすると徐々に人がホームに増え始め、合成音のアナウンスが電車の到着を告げる頃にはいつもの通勤風景のホームになっていた。
ホーンを一鳴らししながら地下鉄がホームに着いた。
ドアが開き彼女は車内へ入った。
幸いにも席が空いていて、彼女は乗降扉の直ぐ隣の席に座った。
おもむろに携帯を開き先ほど着いただろうメールを確認する。
メールは彼からだった。
恋人という関係ではないが、このところ頻繁に逢って共通の時間を過ごすことの多い相手だった。
食事をしたり、休みが合えば一緒に地方の観光地などへ出かける事もある相手だ。
彼の年齢は今30を過ぎた彼女より一回り上だった。

e-mail おはよう、昨夜はよくねむれましたか?
      現場には、少し本番前に入ります。
      先に入っても、煙たがれるだけだから・・・
      では 後ほど
      くれぐれも、この間の打ち合わせのとうりの内容でよろしく願います。

彼女はメールを読んで少しだけ複雑な表情をしながら、手短に返信を打ち込み
送信して携帯を閉じた。

地下鉄が乗換駅に着いた
彼女は目的地に向う路線に乗り換えるためホームを足早に乗り換えのためのエスカレーターに向った。

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写真は今とても気になっている韓国の女優さん


$molt posso 追従できない放物線の裏側へ