ワインバー と言う名の店は西新宿のビルの谷間にあった。

何故か、ワインリストには、妙なワインの羅列とともにサイズなるものが記載してある。

グラスでも飲めると言う事なのだろう。

ただ、空いたワインをその後の客が同じ銘柄をオーダーしなかったらどうするのだろうか。

同時に、グラスで頼んだものが 開封されているものだとしたら・・・・

そんな事を考えるととても面倒なので、ハウスをボトルでもらう事にする。

キャンティ・クラシコ・レゼルバ こらがハウス だそうで ま 良い 何とも陽気なワインが

食欲をそそる。

寒い季節にもなったので トリッパをオーダーした。

メニューには 説明書きとして 野菜とモツの煮込み と記載されていた。(変な店だ)

小さな変な店での宴は 何ら面白い事も無く時間だけが過ぎていったけれど。

隣のテーブルのすこぶる綺麗な女性が 極めて普通の友人女性3人と飲んでいた。

すこぶる綺麗な女性は、自らの美しさが店に与える効果を知っているのか居ないのか終始笑顔だった。

友人に見せる笑顔 と 時折 店内の男性達に そっと合わせる視線も綺麗な笑顔に添われるもののだった。

服のセンス 柔らかそうなウールのワンピース 質感の良さそうな程よい光沢 カシミア混か?

多分、見た目の柔らかさと裏腹に、着心地は意外にも良くない化繊を多く使用したものかもしれない。

そんな同でも良い事を考ええて飲むんだから 退屈極まりない時間だった。


やがて、美しい女性が席を立った。

レストルームか?


退屈な時間はより退屈なものとなった

ふと 私のテーブルの横を通り過ぎる影

見上げると、美しい彼女だ

一瞬見せた物凄い不機嫌そうな顔は店の出口に向けられている。

その顔立ちは、笑顔を遠目で見ていた彼女とは別人だった。

美しく張りのある顔の皮膚も、至近距離では荒れていた。

笑顔の消えた顔は 平凡な女 それも綺麗とは思えない顔だった。


その何とも言えない間の後

彼女は軽やかに自分の友人達の待つテーブルへと向って行った。


そこには、飛び切りの美しい笑顔の彼女が再び居た。


私は、昨晩 彼女の不機嫌そうな顔に 30秒だけ恋をした。


この店の ゼッポリーネは 旨かった。


リングイネの茹で加減もぜっ妙だった


この店 ワインバー というより


ビル街のバールだな