海の家 知ってますか?

夏の初めに、何処からともなく青い錆びたトラックに資材と人足を乗せて現れる。

使い古しのペンキのついた丸太と針金で小屋が現れる。

ゴザとトタンとプロパンガスボンベ 水道だって敷設されてくるんだから。

いつ工事がはじまり、いつ終わったかもわからないままに営業が始まり、台風とともに取り壊される。

秋にはまた静かな海岸が


そんな 一時期のほったて小屋で

海育ちの僕らはここで 恋をしてキスをして 汗ばんだ 細い肩を抱き

星を眺め 酒を飲み 煙草を吸い 音楽だって持ち込んで

波音にBoz Scaggs

海風の中で そう we are all alone


唇の乾いた彼女 子供と呼ぶには歳を重ね

大人と呼ぶには未だ早い

そんな 僕らの恋はぎこちなく 噴出したコーラの泡のように噴出してはべた付き いつか

小さな染みを心に残して 乾いてしまう。


お互いが罪つくり 傷つけても傷つけられても その傷は深かった

けれど、深い傷は若いという事だけで 致命的にはならず いつか忘れてしまった。


そう、若さは残酷でも、その若さは残酷な環境でも生き抜く事ができる力だった。


今 海の家は 綺麗で きちんとしてしている。


こんな綺麗な海の家では 綺麗な筋書きどうりの恋しか生まれない


そんな気がする


彼女 ノースリーブのワンピースから出ている肩が真夏なのに冷たかった事を


秋に思い出して。


つれなさ あいたさ 心変わり それが とても切ない日々だったなと・・・


今夜は そう 中秋の名月だから


海はどうしているのか