今でも戻ってきてほしい失くした物 ブログネタ:今でも戻ってきてほしい失くした物 参加中
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そう、今日も暑くなるね そう感じさせる夏の朝
高層マンションの低層階のバルコニーからの景色
そう、上層階からなら少し違った景色が見える 僕は間違い無くそう思う
色の褪せたコカコーラのベンディングマシーン 朝の陽ざしの中でそこはモノクロの景色
足の重い年老いたホームレスが一人 空き缶入れのゴミ箱を覗きこんでいる
冬の綿が入ったコート汚れた皮膚に顔さえ解らぬほどに汚れた姿
彼は今日1日をどう生きるのだろう
角のコンビニには朝帰りのロッカーが入っていく、黒のタンクトップにサングラス 昨夜はどんな音 響かせて 酒とたばこの煙 大きくは無い小屋で彼はルーズなプレーを夜通し続けた。
何処か寂しげで、そしてそれを見せたくない様子が覗えて、それが寂しい。
コンビニの前に停まるメルセデスから降りた女、きちんとしたスーツ、助手席にはバーキンが。
隙のなさそうな眼差しと仕草で通りを渡って行く。
ホームレスを見つけて道を渡った若い娘 ホームレスを避けるためだけに。
何もかもに我儘に、そしてその我儘さを謳歌している。我儘を言う自分を可愛いと心底信じて。

それぞれに、時間とともに流れ、そして過ぎ去った時間がある。
皆、同じように親から生まれ そして 違う人生を辿り 大人になった。

ロッカーは昔 ガリ勉と言われた 両親は豊かで豊かさは人生の報酬だと信じていた。彼は両親の言うままに沢山努力して 良い学校に入りった。きちんとした仕事も得た、人生の報酬は約束された。けれど、今は歌っている。
彼だけの寂しさを、彼だけのいら立ちを。

隙のない女は子供の頃 とても貧しい家庭に育った。給食費が払えない事で他のクラスメートから虐められた。
でも、払わない自分の親がいけないと、数々の虐めに耐えた。

若い娘、総てが普通、努力した事も無く、苦労した事もなく、そして目立たない子供。人気者でも無く、虐めもなく。
同時に大した存在感も無く、普通で居る事が何となく腹立たしくて・・・でも何もしない。

クラスの人気者、友達が沢山いて 笑顔が絶えない元気な男の子。
優しい両親は自営業で忙しかった。
忙しい両親は子供が不憫だったけれど、しかたが無かった、両親は子供のために懸命に働いた。
子供はそんな両親の事が大好きだった。
彼の両親も彼が大好きで だから彼はいつも笑顔でいられた。
でも、彼は今 ホームレスになっている。

ロッカーは何かに追われる日々を捨て 自由を手にした
着飾った女は貧乏を捨て 豊かな暮らしを手に入れた
若い娘は 何も失わず 何も 得ずに 不機嫌な楽しい日々を生きている
ホームレス 総てを 失った けれど もう失うものは無い

ロッカーは今、自由を食い尽して自分を見失い、幸せでは無かった。
隙の無い女は 欲しいものを手にした けれど 自分自身の心も身体も売り渡し 幸せでなかった。
若い娘は づつと幸せじゃなかった けれど 不幸でもない そんな自分が嫌いだった
ホームレスは幸せが何か 不幸が何かより、今生きている意味さえも良く分からないようになっている。


きっと人生の何処かに大切なものを置き忘れている

彼ら自身その事に気付いていない
今 取り戻す人生の忘れもの

でも大丈夫 誰だって 平等にここの空気を吸っている。

今 みんな 生きている

忘れ物捜しは まだ間に合うから