都心を走る地下鉄の社内は年始の混雑を明らかに感じさせた。
眠っていた都会の血液がいきなり循環しだしたのだろうか、街が人間であれば血圧は一気に駆け上がった条項だ。
そんな仕事始めの様相は夕刻になっても変わることは無かった。
赤坂見附で混んだ車内にカッップルが乗って来た。
恋人同士だろうか、ともに20代中盤という感じ。
ストレートのロングの似合う女性
男性は極普通の若者だった。
つり革につかまりながら会話をしている様はビジネスパーソン同士のカップルとしての節度を持つものだった。
暫くしてこのふたりの様子が変わった。
越に回した男の手は何処か不自然。
若さの衝動はかつて私も覚えがないではないが。
問題は女性の方
その彼の手を腰に感じた途端に彼女は力無く彼に添った、やがて両足が不自然な開き方をしてブーツの踵がだらしなく折れる。
虚ろな目のそれは臨戦状態の女のものだった。
明らかな発情
地下鉄の車内
こんな目をする女性を幾度と無く見た気がする でもその目は地下鉄というパブリックな場面には到底そぐわない。
もちろんこの直後に素敵な出来事が待っているとしてもだ。
これが、ヨーロッパ製のクーペのサイドシートやホテルのラウンジ等であればそれなりに心地よい景色だけれど。
こんな目をする女 とても可愛いと思う。
腰から背中にかけてこのラインを造れる女性 何か独特の種類を感じずには居られなかった。

美しいと思う。
そしてその美しさは一瞬かつ計算されたものでないだけに。