昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。昔々ってだいぶ前です。両手の指じゃ数えきれないくらい昔です。戦争が起こるよりも昔です。お母さんのお母さんのお母さんが産まれるより昔のお話です。

 あるところっていうのは、山の麓です。おじいさんとおばあさんは自分の山を持っていたのでその麓に住んでいました。村からはちょっと離れています。ちょっと離れていますけど、ちょっとだけなので、二人はたまに歩いてお出かけに行きます。それくらいのところです。そんな昔々のあるところに、おじいさんとおばさんが二人で暮らしていました。

 どんな所に住んでいたか?木造の一軒家です。おじいさんが若いころに建てました。部屋は一つです。台所はあります。1Kです。二人で一つの部屋で一緒に暮らしています。

 二人はとても仲のいい夫婦です。結婚したのは、もうずいぶん前ですが、その時からずっと仲良しです。二人の出会いのお話はまた別の機会にしましょう。

 

 ある日のことです。何の変哲もない日。二人にとっては一緒に生活する大切な一日。おばあさんの作った暖かい朝ご飯を食べた二人は、今日することを話し合いました。今朝はいい天気です。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯をしに行くことに決まりました。

 芝刈りの字が違うって?芝刈りではありません。柴刈りです。山の木を切りに行くことです。料理をしたりお湯を沸かしたりするとき、火を使います。その時火を点けるには、薪が必要になります。その薪になる木を取りに行くのがおじいさんの仕事です。おじいさんはおじいさんと呼ばれていますが、まだまだ元気です。木を切るくらい朝飯前です、朝ご飯はもう食べましたけど。

 おじいさんが柴刈りに行く間、お婆さんはたまった洗濯物を川で洗います。川は山の上から流れています。ですが、山を下った先の河原で洗う方が、狭い山道より楽に洗えます。だからおじいさんとは別の方向に行くことになります。

 二人はそれぞれ柴刈りの道具、洗濯の道具と洗濯ものを風呂敷に包んで、家を出ました。、