難治性の神経膠腫に対する有望な治療法を発見-名大


研究では、IDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫を発症するマウスモデル(MADAマウス)を作成し、腫瘍になる前の異常細胞と腫瘍細胞を解析した。今回用いたMADAマウスモデルは、p53とNF1遺伝子異常をもつ細胞だけが緑色に発光し、腫瘍を形成する前の段階からその細胞だけを回収し解析することができる仕様となっていた。その結果、脳腫瘍を形成する前の早い段階からエピゲノム修飾酵素であるEZH2が高発現していると判明。EZH2が多くの重要な遺伝子のエピゲノム異常を引き起こし、腫瘍の形成に重要であることが明らかとなった。また、MADMマウスにEZH2阻害剤(EPZ6438)を投与し、MRI画像で腫瘍体積を確認したところ、腫瘍の増大が抑えられていることを確認。ヒトのIDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫でもEZH2は高発現しており、p53、NF1遺伝子異常をもつ低悪性度神経膠腫の細胞株(TM31)にEPZ6438を投与すると、細胞増殖が抑えられることもわかった。

EZH2阻害剤は現在、血液がん等で臨床治験が行われ、抗腫瘍剤としての有効性が確認されつつあり、近い将来において実際の臨床現場で使用される治療薬となる可能性がある。「今後は、有効な治療法がないとされているIDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫の中で、特にp53、NF1遺伝子異常がある腫瘍の患者に対してEZH2阻害剤の使用が可能になることを目標とし、まずはEZH2阻害剤の臨床治験を進めることを検討していきたい」と、研究グループは述べている。


http://www.qlifepro.com/news/20190823/glioma-refractory.html