Ensemble G.A.P. 第一回演奏会「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の感想 | パリイならてぃす

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ゲームと音楽と演奏活動の語り場。

[日時]2023/4/23 15:00~
[場所]所沢市民文化センター ミューズ アークホール

Ensemble G.A.P.(アンサンブル ギャップ)さんは、Youtubeへの演奏動画投稿をメインにしている、サブカル系演奏集団です。
ゲーム・アニメ・ポップスの頭文字を取り、幅広いサブカルチャー音楽の演奏をされています。
今回の演奏会で初めて触れた方がいましたら、ゼルダ以外の作品も色々演奏されていますので漁ってみるとよいでしょう。
https://www.youtube.com/@Ensemble_GAP

G.A.P.さんは、私が所属するリトルジャックオーケストラのメンバーによって発足された団体です。
コロナ禍においてリトルジャックオーケストラの活動が休止していた時、音楽を奏でるという灯火を絶やさずに懸命に活動してくれていたのも彼らでした。
昨年のUndertale演奏会の成功にも大きく貢献していただき、そんな彼らはG.A.P.の活動に専念することになりました。

弦楽器とピアノ、打楽器で結成された8名の団体ですが、積極的にゲストを招いて自分たちのやりたい音楽を追及しています。
今回はゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドの世界を表現するべく、オーケストラ編成の楽器を集めて演奏会の開催に至りました。
一般的なオーケストラよりも小さめの編成で、奏者は40数名。特に金管楽器はトランペットやトロンボーンが1本ずつという、普通は見かけない編成でした。

実は、一度だけ私も練習に代奏という形でお邪魔させてもらってました。
なのである程度の構成は事前に知っておりましたが、なにせゲームはプレイ途中だったので、先に楽曲に触れる形になりました。
特に後半から終盤にかけての戦闘曲は迫力があってかっこいいものが多い印象で、本番までに何とかクリアに近づいた状態で聞きに行きたいと思ったのですが、結局第2部の頭までしか進められず。
サントラを聞きこんでいる熱量の高い方々ほど細かい粒度での感想は書けませんが、部ごとで印象に残っていることをピックアップしていこうと思います。


■オープニング
・M00 Nintendo Switch Presentation 2017 Trailer BGM
いわゆる「3rd trailer」としてファンに愛されている楽曲。
私も過去にアンサンブルで演奏したことがありますが、その時別団体でG.A.P.メンバーもこの曲を演奏していました。
今回はオーケストラ編成での演奏となり、より一層原曲に近い響きと迫力で聞くことが出来ました。
事前に配布されたプログラムには一切情報が無かったので、当日のサプライズ曲となりました。

■第1部
・M01 始まりの大地 [オープニング~シーカータワー 出現~シーカータワー~謎の老人~祠の試練~老人の正体~ハイラル王の願い]
・M02 ハイラルの大地 [フィールド(昼)~戦闘(フィールド)~廃墟~ガーディアン戦~シーカータワー 起動]
・M03 カカリコ村 [カカリコ村~太古の伝承]
・M04 ハテール地方 [大妖精の泉~フィールド(夜)~カッシーワのテーマ(勇者の詩ver.)~馬宿~襲歩(夜)~ハテノ村~料理大成功]
・M05 強敵討伐 [ヒノックス戦~イワロック戦]
正直に言いますと、ブレワイにこんなに曲あったっけ…?というところが結構ありました。
予習のためにちょこっとプレイしていましたが、序盤はゲーム音楽というよりは環境音楽に近い感じです。
鳥のさえずりや川のせせらぎなど、曲というよりSE的なものをよく耳にしていました。
でも映像の記憶はあるので、自分の脳に残っている記憶をたどりながら、流れてくる音楽を乗せて楽しんでいました。
カカリコ村はやっと曲らしいものが聞こえてきたのと、自分の知ってるカカリコ村とは少しイメージの違う和風な感じだったので印象に残っています。
フルートの音色が素晴らしかったです。金色の楽器なのに、なんか和楽器の音色に聞こえてきました。
その後は…あれ、俺が作中で結構すっ飛ばしてる?カッシーワのテーマとか馬宿をちゃんと聞いていないかも…
カッシーワのテーマを演奏していたのは確か木管アンサンブルのメンバーだったと思います。
「いつつぼし」というアンサンブルチームのメンバーということで、息ぴったりの演奏でした。有名なテーマが入ってきて、ブワッと引き込まれました。
その後の馬宿もいい曲…というか過去シリーズではエポナの歌という曲名で聞いてたヤツですね。
料理も作っていないのですが、周りがクスッと笑っているのを見て、大成功したんだなーと思いました。
どちらかと言えば、初めて手にするアイテムのSEというイメージです。

■第2部
・M06 ラネール地方 [シドとの出会い~ゾーラの里~神獣 ヴァ・ルッタ戦~水のカースガノン戦~英傑の加護~再会 ミファー]
・M07 ヘブラ地方 [リトの村~飛行訓練所~神獣 ヴァ・メドー戦~風のカースガノン戦~再会 リーバル]
・M08 オルディン地方 [ゴロンシティ~ユン坊との出会い~神獣 ヴァ・ルーダニア戦~炎のカースガノン戦~再会 ダルケル]
・M09 ゲルド地方 [カラカラバザール~ドレスアップ~ゲルドの街~驕るコーガ様~コーガ様戦~神獣 ヴァ・ナボリス戦~ルージュに託されて~雷のカースガノン戦~再会 ウルボザ~堂々たる神獣]

ゾーラの里に着いたあたりが私の予習限界でしたが、神獣→カースガノン戦の流れは代奏時にめっちゃテンションが上がったので、完成版を楽しみにしていました。
曲の基本形は同じなんだけど、使われる楽器がちょっと変わるだけで、属性の変化を表現できるんだなと改めて感じました。
ゴロンシティはトロンボーンのソロがありました。リトルジャックのバストロさんで、アマチュアとしての技量は一歩抜きん出ている方なので、演奏会後の感想ではしばしばピックアップされる存在であります。俺もああなりたい…
聞きこんだ音源どおりの演奏をされていて、これを聞きに来たと言っても過言ではありません。
コーガ様戦は手拍子や掛け声が入っていて、聞いてるだけでも楽しかったですし、なんとなく戦闘シーンが脳裏に浮かびました。
金管後列の男性陣がやたら楽しそうにハンドクラップしていたのが印象的でしたw
残念ながらここまでプレイできていないため、曲単体で切り取った印象しか書けないのですが、ミファーとリーバルの曲はやはり好きです。
オーボエ版リーバルを生で聞いたのは初めてでしたが、これはいいですね…音色も合わせて感情を揺さぶられました。

■第3部
・M10 勇者の剣 [迷いの森~コログの森~マスターソードを我が手に~マスターソード~デクの樹の言葉]
・M11 ウツシエの記憶 [十二の記憶が揃う時~リンクの記憶「覚醒 ゼルダ」~ゼルダの願い]
・M12 ハイラル城 [ハイラル城 ガノン咆哮~ハイラル城]
・M13 厄災ガノン [厄災ガノン出現~発動!英傑の力~厄災ガノン戦・第一形態~厄災ガノン戦・第二形態]
・M14 魔獣ガノン [魔獣ガノン出現~魔獣ガノン戦]
・M15 エンディング [覚えていますか?~スタッフロール~エピローグ]

物語も終盤戦。マスターソードとかゼルダ姫など、過去作で使われているモチーフも結構あるので、聞き覚えのあるフレーズになるとテンションが上がります。
ハイラル城からの流れは、ステージ上の奏者の熱量が上がってきているのもひしひしと伝わってきました。
特に印象的だったのは、魔獣ガノン戦のバイオリン。あのバイオリンチームの一体感は見事でした。
大編成オーケストラに負けないどころか凌駕するほどの音圧を感じました。音が揃って濁りが少ないので、そう感じたと思います。
それだけ技量の近しい…というかアマチュアとして一定以上の力量を持つメンバー揃いだったというのを、クライマックスの一体感から改めて感じました。
もちろん、ここまでで沢山見られたソロの皆様の音色だけでも感じられるのですが、合わせる・揃えるというのはソロのテクニックとはまた違う力だと思っています。
ブレスオブザワイルドの世界を全員でちゃんと表現しようという想いが、しっかり伝わってきました。

■アンコール
・E01 聖なる姫と五人の英傑 / 英傑たちの詩 エンディング / 写し絵を飾る
・E02 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』続編[Nintendo Direct E3 2021]BGM

 E01は追加コンテンツの楽曲だそうです。神トラのハイラル城のフレーズがそのまんま出てきて、おおっとなりました。
そしてラストは…続編となるティアーズオブザキングダムの続編を公表した時の曲ですね。
今後の活動を期待させる形での締めくくりとなりました。

追体験型のゲーム音楽コンサートとして、追及した理想を完璧に再現できた貴重な演奏会でした。
あまりいうと身内褒めのようになってしまいますが、奏者の技量が高いことを事前に知っていたこともあり、久々に楽しみにしていたコンサートでした。
指揮者を置かずによくあそこまで揃うものだという感想を散見しましたが、普段から奏者同士の息を合わせる訓練をしている方々にとっては、指揮者がいなくても意外となんとかなったりするものです。
それでも!ピアノと鍵盤打楽器の距離は相当離れていたのに、寸分狂わぬタイミングには感動を覚えました。
パーカッションもホールの響きを上手に使う鳴らし方を皆さんされていて、パートとしても非常に息のそろっているプロフェッショナルな集団でした。
全体を通じて地味だけど良かったのは、ホルンの響き。ゼルダの広大な世界に響き渡るような残響が聞けたのは奏者の技量もさることながら、この編成と配置の巧みさにあると考えてます。
あとはやはり、この世界感を再現するのにふさわしいピアノ。クラシックのピアノ演奏で求められるものとは違うと思っていて、その違いを理解した上でゲーム音楽らしい演奏をされているなぁといつも思いながら見ていました。それを一つの作品を通じてたっぷり堪能できた、幸せな3時間でした。

奏者が青いスカーフを身にまとっていたのに気づいた方もおられましたが、それがG.A.P.オリジナルメンバーだったと気づいていた人は少なかったと思います。
創設時から、彼らの活動を陰ながら見守って応援してきたので私は気づけました。
今回の演奏会をきっかけに、それぐらいのファンが今後増えていくことを、私は望んでいます。

 

(chapter.125)