前回の記事では簡単に紹介するに止まったが、
リオデジャネイロ、サンパウロから飛行機で旅すること2時間、
大西洋に面する広大なバイーア州は、

ブラジルが誇る歴史民族学者、かのジルベルト=フレイレが

≪新アフリカ≫と表現するブラジル像を裏切ることなく体現する、そんな"国"だ。

奴隷貿易の時代に繁栄したバイーアは、
アフリカ大陸から大西洋を西へ、西へ。

はるばる連れてこられた奴隷移民を人種的ルーツに持つ人々が今でも多く、

ここバイーアに存在する。

そして彼らは、そのプリミティブな魂とともに、
食文化を携え、このブラジルへやって来た。

中でも、バイーアのソウルフードと名高き、

"アカラジェ"はアフリカンソウルの凝固であり、

ブラジルに住まう本場アフリカ人も舌を巻いて郷愁に涙するほどだ。


”アカラジェ”を味わうことなくバイーアを語ることは、
入学初日に祝辞を述べる校長先生を殴ること並みに許されることではない。

 



バイーアの州都、サルヴァドールには
余多のアカラジェ屋台が連なる一角、
≪Rio Vermelho/ㇶウベッメーヨ≫という地区が存在する。

 


アカラジェ!その名の由来は諸説あるが、
ヨルバ語源からたどると、
≪アカラ=炎の玉≫に、≪ジェ≫という食すという意を含んだ単語が添えられし
火の神を祀る宗教的な食べものであるとも言われる。

そんなアカラジェの生地は、黒目豆(feijão-fradinho)と玉ねぎを
ふんだんに練り混ぜ合わせた、ご覧の白い練り物からできる。

この、漢代に生まれし四川産シルクのような生地を、

バイアーナは朝早くから、我が娘の髪をとかしてやる母のように、
愛情をこめて練り混ぜるのである。

ああ。あああっっ!!!んっ!

 

そ、、そんな。
可愛い愛娘を、アっっツアツなデンデ油(椰子の油)に放り込むなんて、、

バイアーナ。。。あなたは、、、鬼なのか。。。

※バイアーナ:バイーアの女性。主に民族衣装を身にまといアカラジェを作ってくれる女将のことを指す。

しかし彼女の顔には微かにも哀惜を感じさせない寛大な笑みが浮かぶ。
この灼熱の地獄の試練へと送り込むことこそ、愛しい我が子への愛情とも言うものか。。。


ジュゥんワァ~という嘆きにも似た音。。。

あ、あああ、あん。ああっ。
あっああん。わたしの雪国こまち。
我が慕いし、あなたの清純な白麗さはどこへ。。。

そしてついに、

オイリー地獄から連れ戻された、こまち姫はかようなありさまに。。。

まるでサルヴァドールの容赦ない日の光を
何十年も浴び続けるソテロポリターノ達(サルヴァドール市民の意)のように
茶褐色を艶めかしいほどに輝かせる。

あぁ、うっんあっ。あぁん!

幼きこまちの時分にはない、
なんて罪深くグラマラスな色味。。。

あ。あん、ああ、ぁあん。
今にも噛みつき、食らってしまいたい。



はっ、あっ、危ない。
危うく一線超えてしまうところだ・・・



豊満に膨れ上がった茶色いその果実に一太刀いれると、
この純白。。。
あの頃の君を忘れないでいてくれたんだね。こまち。。。


そして、ここからは母なる手さばきで、
つ、次々と、
ピメンタ、ヴァタパ、サラダ、カマラォンの順に
豪華絢爛な花嫁支度を整えていくではないか・・・!

※順に、

中央)ピメンタ:香辛料

左下)ヴァタパ:パン粉とヤシ油をミルキーに煉り合せたもの

右)サラダ:細切り野菜混ぜ

左上)カマラォン:塩漬け干しエビ

まさに、アフリカの民族衣装が如き華々しき彩り!

そして、ついに、待ちに待ったこの瞬間。

見とれるほどに美しいアカラジェ。
 

そんな君を、

 

慈しんで、

 

いただきます。

 

 

 

 


HAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHNNNNNNNNNNNN!!!!
はっああああああああああああああああっはあああんんん!!

 

 

 

な、なんという、

生地のサクッとした香ばしき味わい、あたかもマグマの如し、
と同時に、滑らかに絡み合わせてくるヴァタパの舌触り、、、な、なんと淫らな、、、
失神しそうなほどの重厚感、の中に、、、その中に、、、
淡きこと水の如し、みずみずしさ溢れしサラーーーダァ!
水を得た魚とはなんぞと言わんばかり、みずを得て踊り狂うカマラォン(エビ)!!!

な、、、な、なんだ!?
飲み込みし後も止まぬ熱き刺激ッ、、、!!!

はっっ!!!君は!!!
ピメンタァ!!!(メメタァー☆!!!)



み、見える、、、、、

 

 

 

。。。。。。



灼熱の日の光のもと、
荒野をたくましく、頑強に生き抜くあなたたちが。

豊かな緑と、艶やかで幻想的な日々。

突如として、枷をはめられ、名もなき異邦の地へと連れていかれた。

苦しみ、悲しみ、寂しみ、あらゆる絶望の中で、
あなたたちは生き抜いた。
今日、この瞬間まで。

その屈強な魂の炎。

そうか。アカラジェとは。

燃ゆる(炎の)魂(たま)を食すこと。



。。。。。。




はっ、
私は一体何を、

アカラジェ。
ひとつ食せば、あなたをスピリチュアルジャーニーへと誘うこと間違いなし。
海と緑と、大地の味がします。

そして、、あの、今は私たちの多くが忘れてしまった、
命をいただくということ。
かけがえのない歴史という大河の中をもがき続けた生命をいただくということ。
あの麗しき生命、魂の旅を想起させてくれる。

そして、どこからともなく溢れる元気。
精魂を精魂たらしむるあの生気!

ソウルフードの中のソウルフード。
王の中の王、ギルガメシュの宝具にも値しうる、、

なんて、雑種が愚かなことを。。。




実はアカラジェ、ビールとの相性この上なし。
果てしなく面倒くさい”元気な”酔っ払いの9割はこのコンビのせいでやられてると言っても過言で無し。
ブラジルビールの軽い飲み口が冴えわたるゥウ!


さて、僕はもう1つ、いただきます。

Obrigado, Baiana.

 

☆☆☆☆☆

取材協力

 

Acarajé da Regina

Acarajé da Cira

 

両店ともRio Vermelhoの有名店。

☆☆☆☆☆

 

~御無沙汰しておりました、BAHIAより水がお届けいたしました~

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