男性で、「少食」「甘いもの大好き」「お酒飲めない」、どれが無し? ブログネタ:男性で、「少食」「甘いもの大好き」「お酒飲めない」、どれが無し? 参加中




「ねえぇ、萩原サンって、お酒、飲めないひと、だったりする?」


やたらうかがうように、言葉をくぎって話す女。

握ったコップのなかの氷が、自分のいらだちを表した音をたてる。



「ははー、さすがユキちゃん、鋭いねー。そうそう、俺、飲めないんだ」

やたら口を開けて、俺は喋った。笑顔も忘れずに。



「やっぱりぃ?あたしと、正反対だね!」

女も口を大きく開けて、笑って言う。
くちびるがそれに合わせて妖艶に光るが、自分はなえた。

正反対という言葉と雰囲気に、どこか優越感を感じとるのは、
俺が劣等感をもっているからだろうか。


「あたしオトコの人並みに飲んじゃってー、いっつもザル、ザル、言われるのー。酒豪とか。
ひっどいよね?」

待て。男の人並みの基準がおかしいだろ。お前の周りの男ってつけとけ。

…なんて、ほぼ初対面の相手に言うはずもなく、


「ひっどいなー!」

「でしょー?」


合わせとくのもマナー、決して下心からではない、と思う。


「ねぇー、あたしが萩原さんぐらい飲めない子だったら、カワイイとか思うー?」

「なに言ってんの、酒豪でもユキちゃんならカワイイし!」

「えぇ?ほんとぉ?」


ええ。とりあえず顔は。

…とか、思いながら、後は流しながし、いい雰囲気を崩さなかった。
自分のために。



ささやかな俺のささやかな憂鬱



「萩原さーん、げんきいぃ?」

「元気、元気」

「やだー、やらしぃしぃ」

「なにが」

「きゃははっ、もー、やぁーだー!」

「そうなの」


だめだ。セリフ棒読みである。
酔っ払った相手といると、いつも俺は大根役者になる。


「送るよ」

「だからぁ、もーー!えっ、うあっ!?」


やたら声とリアクションが大げさになってるから、
ちょっと躓くだけで、空から隕石でも落ちてきそうだ。


「転ぶって」

「だーい丈夫!」

「いやいや」


下心はいつの間にか、面倒くささに変わっていた。
いや、やれないこともないけど、
そこまでテンションが上がるどころか、若干ひいてしまう俺がいた。


…たかがお酒、されどお酒。


みんなが飲んでんのは、テンションと雰囲気なんだなぁ、と
大根役者になりがちな俺はおもうのです。










さて、いつもお話なのですが、今日はせっかく観てきたのでちょこと閑話休題。

ごめんなさい。語りたくてたまらないぐらいヒットでしたので。

以下、若干ネタバレ?








佐渡裕指揮、ロバート・カーセン演出のオペラ

「キャンディード:CANDIDE」を観に行ってきました。

兵庫・西宮の芸術文化センターです。

初演かつ、直前飛び入りかつ、自分はオペラ初めてなのでどきどきです。




感想は、全てが詰まってた!!!

です。シンプルに(笑)


演奏はもとより、なんてキャッチーでシニカルで、でもエネルギーのある舞台なのだろう!


原作はヴォルテールという、太陽王ルイ14世~マリーアントワネットの夫ルイ16世あたり

のフランスの哲学者なんですね。

本人もかなりハチャメチャな人生送ってるひとで、放浪・投獄・大もうけ、波乱万丈人生。

その晩年にかかれたもので、まさに奇想天外。何でもアリ!

生も死も、宗教も、人種も、愛も、セックスも、哲学も、神も、自然も。



それが、カーセン氏によって、現代の風刺を交えたブロードウェイ顔負けの演出で

第一幕、の1って映像が中指立てるアレなポーズだったり。

ってか、モロに設定背景ホワイト・ハウスです。

で、マリリン・モンローです。(可愛かった)

舞台自体がテレビ画面のなかです。

のような、

ザッツ エンターテイメント、BUTさすがオペラ、

声が素晴らしい(身体が共振した)でした。


米・オバマ大統領や伊・ベルルスコーニ氏の役がでたり。(他、英・仏・露など)

しかも自分の国旗柄の海パン姿でだぜ!?という。

京都議定書なんて知らないとか、ベルルスコーニにテレビ放映権の話題とか、

そもそも設定が仮想のウェストファリア国で、

石油流出事件とか、沈まない豪華客船とか、シェ〇石油とか。

色々含みもたくさんでニヤニヤしてしまいました(笑)

引っかかった方、ぜひ小ネタ語りしたいです。

皮肉も鋭いけど、嫌味じゃなくってクールでした。




人間には自由意志はなく、原因結果しかないという(強引まとめ)

スピノザっぽい思想とか。実際歌詞にスピノザの名が。(スピノザは性善説じゃないけど)

哲学的部分も入ってて、深かった。おもしろかった。


まさに「今」にピッタリで。




しかしですね、最近の啓発本にありがちな、世界は善で作ることができる!

こうなったのは、こう考えたからで、全てを肯定しなさいー

変わるんだーアセンションだーっていうのを否定はしません。

でもナンカ違和感だったのですね。

(わたしの受け取り方が歪んでたかも;ただし長くなるので割愛)



そのキレイだけれど、うすいステンドグラスのような世界観を

見事に、軽快かつ豪華かつ鋭いユーモアで

正面からぶっ潰して、

その奥にはもっと、深くて、奥行きのある、宇宙空間があった。


そういうように私は感じて、

駅で551の豚マンを買いつつ(匂いにまけた)、

観たあとは世界が広くなりました。とても。


Make our garden grow!!(フィナーレ曲)

ですね。

すばらしい新世界も、最悪だった旧世界も、

エデンの園もないし、ピュアでも賢くも正しくもないけれど。

自分で耕そう。

それしかない、というより、それが全部なんだと思う。

全部詰まってるんだと思う。




いかん。感想のつもりが、ハチャメチャに。

じつは佐渡裕氏目当てで行ったのですが、

舞台演出にパンチくらわされて帰ってきました。

でも、佐渡氏の音楽はその演出にちゃんと寄りそっていて

とても広かった。


まだ兵庫・東京ともにあるのでぜひ!




最近の自分状態、色で表すと? ブログネタ:最近の自分状態、色で表すと? 参加中




冷気に張り詰めた空気が、その中をすすむ僕の頬に爪を立てていく。

町の街灯がほんのりと朱に色づき始めたころ、僕は彼女をみつけた。




別世界のエーデルワイス




靴の裏を通って、でこぼこした石の感覚が伝わる。

そんな黒い石畳の道の上、ひとりの女の子がひっそりと立っていた。

うっかりと、目から吸い込まれていくかと思った。


雑多な足によって汚く黒ずんだ石畳の上に立っているには、不釣合いのような白さだった。

かぶっている白い帽子の下からは、同じように白い色と、

街灯よりも燃えている朱色の唇があった。

その下のコートも雪のようで、首筋や手首にかかるファーはそれこそ粉雪で出来ているのかと思えた。



僕の足が、進んでいく方向を見失って立ち往生している。

幸い彼女はあさっての方向を見つめていたので、僕を知らない。

だからこそ、僕と乖離した彼女の世界は、まるで別々の世界のようにそこに存在した。


僕は彼女に恋をした。


けれど、僕は、そこにはいけない。

彼女の見つめている先にいる人間だけが、彼女の世界に招き入れられる。

彼女は誰を待っているのだろう。

彼女の世界へと、迎えられるのはどんなひとなのだろう。

それとも、誰も、入れないんじゃないか。


彼女に縫いとめられた目とは反対に、ぐるぐると意識だけが動いてしまう。





彼女と僕の世界のあいだを、雑多な足がいく度も石を踏みつけていく。



けれども、いつまでも僕の世界はここに在りたかった。




そんな僕と彼女と、雑多な人たちの世界のうえに、

定例の低い音が降りそそいだ。

時刻を告げた鐘の音だった。




その白い世界が、鈴のように動いた。



目が合った。


でも、もう。


僕の足は、進むべき方向へとエンジンを吹かしていた。







今度は僕の頬が、街灯よりも燃える番だった。

もちろん、石畳のくすんだ黒でも、彼女の粉雪のような白でもない、

暗闇を照らす灯のような朱色に。




fin.