今痛いところ ブログネタ:今痛いところ 参加中



なぜだか、投げたのか投げられたのか、覚えてはいないけど、


あの強くて白い光を浴びていた小石と、その行く先を追っていた目の記憶がどうにもとれない。





遠くの街の遠くの石と




道路のアスファルトに少し熱を感じ始める季節になった。

照りつける日の光も熱いには熱いが、まだ痛くはない季節。

どうしようもなく夏に向かっていく気候に引っ張られて、ただただ夏まで運ばれるしかない季節。



そんな夏に片足をつっこんだ日の昼間、俺はただバスに乗ろうとバス停まで歩いていたんだ。


「あ…」


と自分の声を聴いてから、声を出したことに気付いた。


目の前に鮮やかな色が通り過ぎてく。


ただ、自分の目的地の名前だけが停止したようにはっきり見えた。



「しまった…」



しっかり、自分の乗るバスが行ってしまったのだと認識したころには

バスは先の道路に跡形もなく、更に先の目的地へと向かっていってしまった。


いっきに、足の機能が低下する。足が重い。


見えなくなったバスの変わりに、白く先を光らせたバス亭の看板が目に入ってきた。





そうなんだ。

いつだって。

目的地というものは、常に自分の先にしかないのだ。


過ぎ去ったものを目指す人はいないのだから。





とかなんだか、本で読んだと思われる言葉が頭を流れた。


と同時に、頭が痛くなってきた。




さて、とりあえず、どうしようか。


手段を変えるか、それとも目的地自体を変えるか。





じわじわと伝わってくる熱と、じんわり温まってきた皮膚にはさまれて


俺の頭は、しばし白い隙間だらけの時刻表とにらめっこするしかなさそうだ。




fin.







今、1番頭の中にかかりやすい曲 ブログネタ:今、1番頭の中にかかりやすい曲 参加中







じりじりと顔の皮膚が焼けたつ。


ちょっとでも、当たる表面積を減らそうと下を向くと

自分の服の、季節はずれの紺色が見えた。



そのとき、ちょっと自分の立っているのが、今なのか、過去なのかわからなくなった。


でも、過去に返りたい。

そう思うほどには、悲しくなくなっていた。



また目線をあげると、目の前の信号が青に変わった。

歩き出すと、次の目的地のことで、また頭が埋まっていった。




季節はずれの色と




歩いてると、人はまばらで、どうしても看板しか目に入らない。

誰に主張してるのか、わからない看板だけど、

今日の自分には天敵だった。


緑の文字に、白い英字で抜かれているそれは、

どこにもあるようなレストランのもので。


思わず、眉根をひそめて、でも一瞬でもとに戻して、

かわすようにビルの合間の道に入った。


すぐ通り抜けたけど、かかっていた曲はバラードだったようだった。

男性歌手の、なんだっけ、と頭の中で検索する。







ただ 逢いたくて

もう 逢えなくて



ふと、頭の中の曲と、メロディーが繋がってしまった。



ちょっとびっくりして、訳もないのに目を見開く。

もし人がいたら、変な人と思われたかもしれない。











ただ 逢いたくて


それを聴いたのは、いつだったろうか。

冬だった気がする。


どこかのレンタルショップに二人で入ったときに、かかっていた。


そのときは、久しぶりに会ったから、

縁起悪い曲をかけるな、と勝手な感想を思っていたけれど。

その冬中かかってて、向こうが好きだったからアルバムをかけて、よく聴かされていた。


ただ 逢いたくて。

今逢いたくて。


それこそ雪のように消えていく声が、頭の中に降ってくる。





でも


もう、夏なんだ。


季節ってものがあって、本当によかった。






冬のまま、閉じ込められていたら…。


夏のじりじりと皮膚を焼く暑さが、ありがたく思えた。

紺色は、そろそろ仕舞おうか。



また、出た道の信号が今度は赤になった。

今のうちにプレーヤーを引っ張りだして、違う曲に変えよう。



また、夜になって、頭の中に鳴ろうとも。

ささやかな抵抗を試みた。




携帯が、オレのからだに信号を送ってきた。

場所はデニムのポケットから。

なじみのある振動にそって、手を伸ばす。

その無機質なものは、どんなものより、しっくりオレの手に馴染んだ。




恋人で携帯が恋人との





「でさぁ、……。ねぇ」

「うん?」

「携帯、光ってるよ」

「あ、ほんとだ」


午後も半ばすぎた、くつろぐ人で満席のカフェ。

気にもとめないBGMの中、彼女とスムージーを飲んでいた。

いつものごとく、彼女の近況が始まって、オレはただ聞いていた。

頭の中の意識まで到達してるかは、別として。



そのテーブルにトレイと一緒に並んでるオレの携帯。

彼女に指摘されたとおり、きらめいて受信をしらせていた。



「……」


スライド型なので、そのままメールを確認する。

明日会う、友人からだ。


「……」



気にもとめてなかったBGMが、耳に流れてきえていく。

そこで、ふつりと彼女の空気が消えた。

ただ、手の中にある感触と、BGMと、自分の空間のなかに入る。

画面を見ているようで、実は自分の頭のなかで言葉の感覚をさがしている。


「……」


手だけが、正確には指だけが動いている。

でも、それすら感覚であって、視界ではない。






「あっ!!」





と、音がした。

ふと、感覚で状況をつかもうとする。


ちょっとわからないが、たぶん、あの子が何かを落としたらしい。

目の前の子が、フォークを持って、何かいっている。



「落としちゃった、これ。換えてもらってくるね」


そういって、目の前が空いた。

自分は、なにか返事をしたのだろうか。

顔が動いた感覚はないのだけれど。




また、BGMと脳内の感覚へ戻ってきた。

”見ている”という感覚はないのだけれど、

たぶんオレは携帯を見ているんだろう。



自分の脳にも、

手にも、

感覚にも

ずいぶん馴染んだ携帯を。






…もしかしたら、彼女という名の人間よりも。







いや、当たり前なのかもしれない。

だって、彼女とはまだ1年もいない。

けれど携帯は、何年も一緒にいる。

寝るときも、起きるときも、移動中も。

ロッカーに置いてるときだって、家族や恋人よりは近くにいるのだから。







そんな事を、明日の連絡事項に返信しながら思っていた。







「見て、換えてきてもらった!」


「よかったじゃん」


「うん」




いま、目の前に座りなおした彼女の顔が、

どんな表情だったかオレの意識にはなかった。



それより、携帯がまた光る気がして。










end.