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日刊ゲンダイ DIGITAL (2019年6月3日付)
【 話題の映画「主戦場」保守論客が騒ぐほどヒットの自業自得 】

「ダマされた」「肖像権の侵害だ」――。

 話題のドキュメンタリー映画「主戦場」を巡って、取材を受けた保守系論客たちが怒っている。

 この映画は日系米国人のミキ・デザキ氏(36)が従軍慰安婦問題を追究するために、保守派とリベラル派の両陣営の30人をインタビューした労作。従軍慰安婦のほか南京事件や教科書問題、日米安保問題など論点は多岐にわたっている。「LGBTには生産性がない」の論文で有名な自民党の杉田水脈衆院議員やケント・ギルバート氏などの保守派が出演した。4月20日に都内1館のみで公開され、全国43館まで拡大した。

 5月30日、映画で「歴史修正主義者」などと紹介された3人が都内で会見。「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長は「上智大大学院のデザキが学術研究として申し込んできたので承諾した」「グロテスクなプロパガンダ」と批判した。

 自分たちのような従軍慰安婦に否定的な人を取材した後で反対意見の論客に反論させた手法をやり玉に挙げ、商業映画として公開するとは聞いていなかったと主張。ただ、発言内容の訂正は求めていない。要するに自分たちを“悪役”として出演させたことに怒り心頭のようだ。

 一方、デザキ氏は反論動画をユーチューブに投稿。「映画の出来が良ければ一般公開も考えていると伝えており、彼らも知っていた」と主張している。

「5月2日に都内の映画館に見にいったら、4回の上映がすべて満席。翌日の席を予約して見学しました」とは元衆院議員で政治学者の横山北斗氏。

「驚いたことに観客の半数は20~30代の若者。映画の内容に満足しているようでした。保守論客たちは発言を意図的に切り取られたと言ってますが、しゃべったのは彼らが日頃から口にしている内容。デザキ監督が改変したわけではない。それなのに今になってショックを受け、うろたえているのは映画の完成度が高い証拠です。彼ら保守層が騒ぐほど映画は注目されてヒットし、従軍慰安婦問題や安倍首相の政権運営に関心を示す人が増えるはず。出来るだけ多くの人に見てもらって日本の保守政治の是非を考えるきっかけにして欲しいと思います」

 デザキ氏は3日、都内で会見を開く予定。第2ラウンドはどんな展開になるのか。
(シェアした記事の URL:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/255278)
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 この『主戦場』という映画は見ていませんが、シェアした記事を読む限り、制作者 ミキ・デザキ 氏が いわゆる歴史問題 --- 従軍慰安婦、南京虐殺事件、日米安保問題など --- について、歴史修正主義派とその反対派双方に自らの見解を述べさせ、それを交互に編集した内容とのこと。であれば、なぜ、歴史修正主義派は「グロテスクなプロパガンダ」などと騒ぐのでしょうか。

 記事中、政治学者の 横山北斗 氏は「保守論客たちは発言を意図的に切り取られたと言ってますが、しゃべったのは彼らが日頃から口にしている内容。デザキ監督が改変したわけではない。それなのに今になってショックを受け、うろたえているのは映画の完成度が高い証拠です」と発言していますが、まさにその通りだと思います。

 もっと言えば、彼ら歴史修正主義派は、この映画が国内だけでなく、国外でも上映されることを恐れているとしか考えられません。なぜか。それは、歴史修正主義派の主張は最終的に " 第2次世界大戦をどう考えるか " に行き着くから、です。

 この点について、彼らは常々 1)真珠湾攻撃はアメリカの陰謀だった、2)極東軍事裁判は偏見に基づく裁判だった(よって受け入れられない)、3)日本の植民地支配は、欧米と違い、現地を収奪するものではなかった、の3点を主張しています。一言で言えば、徹底した 戦前の日本擁護 論です。

 一方、歴史学を含めた国際的に定まっている第2次世界大戦の評価は 1)日本、ドイツ、イタリアを中心とする枢軸国側による他国への侵略と、それに反対するイギリス&アメリカを中心とする連合国側の戦いであり、2)枢軸国側の政治体制は自由や民主主義を否定するファッショ体制であり、連合国側の政治体制は自由主義をベースとした民主主義であり、それゆえ、同大戦は ファッショ国家群(全体主義国家) vs 自由主義国家群 の戦いでもあり、自由主義国家群が勝利した、です。

 そして 3)2度の世界大戦を受けて、集団安全保障体制として the United Nations(連合国、日本でのみ 国際連合) がつくられ、それが現在に続く国際秩序の基本となっている --- 繰り返しますが、これが第2次世界大戦に対する世界的な評価です。

 厳しく言えば、第2次世界大戦を始めたのは日本、ドイツ、イタリアであり、世界大戦へと拡大したせいで全世界で5000万人とも8000万人(!)とも言われる犠牲者を出したのです。ですから、第2次世界大戦における日本、ドイツ、イタリアの加害責任は限りなく重い、のです。

 敗戦後の日本は 1)事実上、アメリカ一国による占領支配でしたし、2)大戦終了と同時に冷戦が始まったのでアメリカが日本に軍隊を駐留させる必要性を重視したため、3)アメリカ及び連合国による戦犯追求が甘くなった、すなわち、温存された天皇制と官僚体制によって間接統治体制が取られました。

 つまり、敗戦国 日本に対する加害責任追及は甘く、そのため、生き残った旧支配層 --- その多くがA級戦犯容疑者として逮捕されながら、起訴されずに生き残りましたし、彼らは恥じ入ることもなくアメリカの協力者となっていきました --- が、1952年の占領体制終了と共に、アメリカの意向を承る新支配層として戦後復帰を果たしたのです。戦後、総理大臣となった 岸信介 --- 安倍晋三総理の祖父 --- もA級戦犯容疑者でありながら、アメリカの協力者となった一人です。

 軍国ファッショ体制下で情報統制されて締め付けらてきた一般国民は政府に対し声を上げることは慣れておらず、しかも、苦しい食糧事情下で日々を生き抜くことに専念せざるを得ませんでした。旧支配層の責任追及を熱心に行える状況ではありませんでした。加えて、アメリカが天皇の戦争責任を追及しなかったこともあり、国民サイドから厳しく旧支配層の責任を追及する声は上がらずじまい。

 一言で言えば、日本では旧支配層の戦争責任はほとんど問われないまま。この点は、大戦終了近くにムソリーニを逮捕処刑したイタリア民衆や、戦後も一貫してナチス犯罪を追及し続けているドイツ国民とはまるで異なります。それゆえ、未だに日本では戦前回帰を目指す復古反動勢力が影響力を持っており、そのお先棒かつぎとして活動しているのが、シェアした記事に登場する歴史修正主義者らです。

 歴史修正主義者らは戦没した日本軍人らを英霊などと祀り上げた靖国神社をありがたがりますが、その背後には、はるかに多くの外国人の犠牲者 --- 日本の侵略行為が起こした戦争が原因で亡くなった人々がいることを無視しています。一言で言えば、彼らの歴史観は まったく独り善がりで、加害者としての責任を引き受けようとしない卑怯千万なもの に過ぎません。このような姿勢は日本以外ではまったく通用しません。

 実際、北方領土返還交渉で、安倍晋三政権はロシア側から「日本は第2次世界大戦の結果を受け入れていない唯一の国」と批判されましたし、その批判後は 北方領土 という言葉すら封印する腰砕け振りです。日本が第2次世界大戦勃発の原因国家であることを知っているはずの外務省などは、ロシア側のストレートな発言に驚き、安倍政権もさぞや焦ったのでしょう。ロシア側のたった一言でビビッてしまったのです。

 日本国内で歴史修正主義が蔓延していることが外国にも知れ渡り、かつ、歴史修正主義者らと安倍政権が非常に親しい関係にあることくらい、ネット時代の今なら世界中が知り得る状況です。もう日本国内だけで歴史修正主義発言を貫き通せる時代じゃない、ってこと。第2次世界大戦中、日本やドイツ、イタリアの枢軸国により被害を受けた国々の目は今なお厳しいのです。

 ゆえに、日本国内で政治家らが靖国神社参拝を繰り返したり、「中共がぁ」などと言うこと自体、世界で孤立化する可能性すらあります。エネルギーと食料の大半を輸入に頼るわが国は、平和主義と国際協調主義を旨として生きていく他に手はありません。孤立化などもってのほか。戦後、日本はアメリカの影に隠れることで被害国からの批判をかわしてきましたが、そのような外交姿勢こそ卑怯と言わざるを得ません。

 歴史修正主義者らは自らの発言が国際的に公けになれば、全世界的に非難が巻き起こることを知っており、それゆえ、映画『主戦場』が海外も含めて公開上映されることに恐怖を抱いている --- その恐怖感が ミキ・デザキ 氏に対するヒステリックな非難となっている構図と見ます。実に姑息であり、卑劣な歴史修正主義者らです。しかも根性なし。

 分かりやすい言葉で言えば、ウラでコソコソと立ち回って、お仲間の安倍政権に擦り寄る態度、やはり、ゴロツキども と言うほかありません。しかし、皆さんご存知のように、安部政権と言えば、祖父の岸信介の代からアメリカの協力者であり、アメリカべったり以外に外交手段はありません。ロシアや中共、北鮮もとっくに 安倍外交=アメリカの言いなり ということを見抜いています。

 アメリカ ⇒ 安倍政権⇒ 歴史修正主義者 という流れですが、当のアメリカ自体が日本軍国主義を打倒した国であることを考えれば、歴史修正主義者らの主張は、その始まりからしてオワコンです。世界的にはまったく通用しません。その証拠に、安倍総理も含めて、国外で第2次世界大戦の結果に異議を唱えた支配層は誰一人いません。皆、殊勝にも自由と民主主義に基づく体制を擁護する発言を繰り返すのみ。卑怯ですね。

 いいですか、皆さん。シェアした記事に出てくる歴史修正主義者など国内だけでギャアギャアわめいている激バカであり、卑怯者です。そして、こうした連中と親しい安部政権が長々と続いていることを世界の人々は見ています。その結果、日本は外交的に孤立化を深めることになり、それは私たちの暮らしを破壊する方向への動きです。次の国政選挙では絶対にこの流れを止めなければなりません。
(2019/06/07 記述)

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