安倍晋三政権は2015年9月に集団的自衛権行使を容認する安保法制の改定を強行採決し、来る7月に行われる参議院選挙では憲法改正 --- 憲法第9条の改正を目論んでいます。安部総理の目論見通り、憲法が改正されれば、日本はいよいよ本格的に " 戦争をする国 " に変貌します。
 安部総理は「憲法に自衛隊が明記されても何も変わらない。ただ、自衛隊違憲論争に終止符を打つだけ」と述べていますが、そもそも、何も変わらないのならば、憲法を変える必要はありません。また、自衛隊違憲論争も1980年代後半からは下火で、国民の間では " 自衛隊は合憲 " という意見が大勢を占めています。


 従って、安部総理の憲法改正に関する発言を字句通り受け取ることはできません。そもそも、国の根本法である憲法を改正するには、国民の側から「憲法を変えるべきだ」という意見が多数上がることが必要です。「現行の憲法のままでは国民の生命・財産や権利が守られない」という多数の具体的な意見が必要です。
 当然、前提として、国民の生命・財産・権利が守られない事態 --- 具体的に憲法改正を要求するもととなる事実を " 制憲事実 " と言います --- が実際に起きていることになります。果たして、現在の日本でそういう事態が生じていますか。まったくそういう事態はありません。


「いやいや、中共が攻めてくる」ですか。ハッキリ言いますが、それこそ自民党議員たちや自民党ネトサポ、果てはネトウヨらのデマです。なぜなら、中共が沖縄などに攻めてくれば、それはもう明白な国連憲章違反。ロシアのクリミヤ侵攻時のように、直ちに国連総会で非難決議及び制裁決議が出ます。
 現在、経済発展を続ける中共は、14億(!)を越える国民を食べさせるため、様々な経済外交政策を打ち出し実行中です。アジアインフラ投資銀行( AIIB ) 創設や 一帯一路構想 ですね。これらはすべて、順調に経済成長を続けなければ、共産党が独裁的に主導する中共という国家が持たないことを意味しています。


 しかも、中共には自身が国内問題と主張する " 台湾との統一問題 " が最重要かつ最難関の課題として横たわります。中共が「台湾統一は国内問題」と主張する理由は、先ほども述べた通り、国連体制下では " 他国の領土や他国が実効支配する地域への軍事的進出は侵略と認識され、制裁対象になるから " です。
 国連の制裁対象国になれば、アジアインフラ投資銀行( AIIB )創設や一帯一路構想などすべてが台無しになります。そのことはクリミヤ侵攻に対する国連の制裁で経済的苦境に陥っているロシアを見れば分かります。順調に経済発展を続けている中共がそんな無謀な冒険はしません。かつての軍国 日本とは違います。


 逆に言えば、未だに「中共が攻めてくる」などと叫び、煽っている自民党議員や自民党ネトサポ、ネトウヨらのオツムこそ、戦前の大日本帝国の発想から抜け出ていないということ。時代遅れで、バカ丸出しです。むしろ、現在のように日本政府が沖縄県の民意を無視し続けることこそ危ない。
 なぜなら、自分たちの意思が無視され続けた沖縄県民が独立を要求し始めたらどうでしょうか。「我々は江戸時代に強引に日本に編入された。そして今も日本政府は我々を無視している。これは我々に対する差別であり、我々は独立を望む」と主張し始めたら、沖縄に対する日本の実効支配が揺らぎます。


 こうなると、ロシアがクリミヤ侵攻した際の状況に似てきます。ロシアは 1)クリミヤは元々ロシア領で、ソ連時代に国内問題としてクリミヤに編入されただけ、2)クリミヤ住民の大半はロシア人、3)彼らはウクライナ政府により差別されていると訴えている、という理由でクリミヤ侵攻を正当化しました。
 いかがですか。この状況、沖縄県の問題と似ていませんか。こういう状況下で実際に中共政府と沖縄県民が接触し始めれば、中共は「沖縄県民が独立を望んでおり、彼らが支援を要求してきた」として介入してくる余地が生まれます。すなわち、中共の介入を許すスキは、現在の安部政権の対沖縄政策にあるのです。


 北鮮の問題もわが国に対する脅威ではありません。その理由は 1)北鮮軍は急速に弱体化している、それゆえ、核や弾道ミサイル開発を進めているが、2)これらを一度でも使えば、アメリカは北鮮を滅ぼす、3)中共も近隣での大規模な紛争は望んでいない、4)日本は戦後補償を求める相手、の4点です。
 北鮮は「自分たちの体制が保証された上で、日本から戦後補償を取りたい」と考えていますので、日本に対し軍事力行使をしてくる理由はありません。軍事攻撃すれば、自分たちが加害者となってしまい、被害者だから受け取れるはずの戦後補償が受け取れなくなるからです。北鮮もかつての軍国 日本より数段カシコイのです。


 いかがですか、皆さん。安部政権は度々「日本周辺の安全保障環境は年々深刻さを増している」などと言いますが、深刻さの原因とされる中共も北鮮もまったくわが国に対する脅威ではありません。むしろ " 安部政権こそがありもしない脅威を煽って、憲法改正への制憲事実にしようとしているだけ " です。この点を見誤ってはダメです。
 安部政権のやり口はナチスドイツの空軍大臣だった H・ゲーリング の言葉そのまま。ゲーリングの有名な言葉をどうぞ。
《  もちろん、一般市民は戦争を望んでいない。貧しい農民にとって、戦争から得られる最善の結果といえば、自分の農場に五体満足で戻ることなのだから、わざわざ自分の命を危険に晒(さら)したいと考えるはずがない。当然、普通の市民は戦争が嫌いだ。(中略) 国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。とても単純だ。
 自分達が外国から攻撃されていると説明するだけでいい。そして、平和主義者については、彼らは愛国心がなく国家を危険に晒す人々だと公然と非難すればいいだけのことだ。この方法はどの国でも同じように通用するものだ。 》


 ここまでを整理しますと、" 憲法改正は実際に制憲事実があり、国民の大多数から「憲法を改正してその制憲事実に対処すべきだ」という意見が上がり、それを受けて衆参両院の国会議員が発議し、その発議を国民投票にかける " ことになります。従って、憲法を変えるべき制憲事実があること、が最重要です。
 逆に、制憲事実がありもしないのに、国会議員や行政府のトップである総理大臣などが憲法改正を言い出すのは、まさに憲法第99条違反 --- 憲法尊重擁護義務違反です。日本は民主国家ですから、主権者はあくまでも一般国民です。公務員である総理大臣や国会議員ではありません。
 これも考えてみれば、当然です。なぜなら、総理大臣や国会議員は現在の憲法によりその職に就き、国民の税金で雇われているのですから。たとえれば、ある家のお手伝いさんが主人に向かって「この家の決まりを変えますよ」などと言えば、そのお手伝いさんは「お前は何様か! もうクビだ」となるでしょ。それと同じです。


 従って、制憲事実もないまま --- 大多数の国民の側から「憲法を変えよう!」という意見も出ないまま、総理大臣や国会議員らが憲法改正を進めようとすること自体、すでに憲法違反なのです。実際、安部総理らは、現在の憲法では自分たちがやりづらいから、憲法を変えようとしているに過ぎません。権力の私物化が見え見えで、醜悪かつ悪質です。
 このような状況で、安部総理らが主張するように憲法が変えられれば、大損害をこうむるのは私たち一般国民です。特に、安部総理の言う通り、憲法第9条に自衛隊が明記されるようになれば、18歳から30代前半の若年層の人たちは大変な目にあうこと間違いなし。なぜか。


 自衛隊が憲法に書き込まれれば、自衛隊は慢性的に隊員充足数が不足しているので、政府は 徴兵制 に類似した法制度 --- 戦闘任務以外に従事する若年層国民の動員を可能にする 国民動員法 の成立に向けて動き出すハズ。" 安保法制改定 ⇒ 憲法改正 ⇒ 国民動員法成立 " とくれば、もう逃げ道はありません。
 18歳から30代前半の若年層の人々は、安倍政権が目論む改憲によって、自分たちがヤバイ状況下に駆り出される危険性がどんどん高まっていることに真剣に向き合うべきです。さもないと、数年後には アメリカ軍のお手伝い として、海外の銃弾飛び交う中で物資輸送などをやらされるハメになりますからね。


 憲法改正の国民投票で、よく考えもしないで「総理大臣が望むのだから正しいだろう」と賛成票を投じたり、あるいは「自分が投票しても大した違いはないだろう」と思って棄権するのは、自分で自分の首を絞める行為ですよ。皆さん今一度、ナチスドイツの空軍大臣だったゲーリングの言葉を思い出してください。(2019/05/22 記述)

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