去る2日、産経新聞による台湾総統 蔡英文 氏のインタビューはとても興味深いものでした。ただ、蔡総統が外交辞令として 安倍晋三 総理の安全保障政策を持ち上げているのはいただけませんが。
 実際のところ、安倍総理の安全保障政策は高価な武器をアメリカから爆買いすることに終始しており、それゆえ、現場の自衛力が低下するという危機を生み出していることに私たちは留意すべきです。
 特に、1)陸上自衛隊にオスプレイを導入するため、戦闘ヘリ部隊が事実上運用できなくなりつつあること、2)護衛艦いずも の空母化で海上自衛隊の護衛艦運用に大きな支障が出る可能性が高いこと、など懸念は尽きません。
 安倍総理のトランプ言いなり爆買い外交の問題を知った上で、蔡総統のインタビューをご一読ください。また、その後、筆者の論考をお読みいただければ幸いです。
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◆ " アメリカが日本を守る " はタダの幻想 ◆
 使い物になるかどうかも分からず、また、現在の自衛隊の人員数で十分扱えるかどうかも分からない装備を、現場の意見を無視してトップダウンで決めるよりも、安全保障上、わが国と同様の周辺の危機を感じている隣国と協力体制を築くことこそが真の安全保障政策です。
 そして、冷戦が終了して約30年が経ち、日米安保条約への過度の信頼は危険であることを国民が理解すべき。恐らく、国民の大多数は日米安保条約の条文すら読んでいないと思いますが、同条約には「アメリカが日本を守る」という明文の規定はありませんからね。
 もし、あなたが日米安保条約により「アメリカが日本を守る」と信じているなら、それは当時の 岸信介 総理によるウソに未だ引っかかっているということです。どんな軍事同盟条約においても最優先されるのは 自国の利益。他国のために自国が危機にさらされるのなら、そういう条約は直ちに反故にされます。

 第2次世界大戦終了直後から、世界を2分して米ソがそれぞれの陣営を築き、軍事的に対峙していました。自由主義 vs 共産主義 というイデオロギー対立が自由市場経済体制 vs 国家計画経済体制 という経済体制の対立を生み、それが両陣営による世界レベルでの軍事的対峙へとつながった、それが冷戦時代でした。
 冷戦体制下、アメリカ vs ソ連+中共 という大国同士が対立する極東地域で、アメリカは軍事的存在感を維持するため、日本占領軍をそのまま日本駐留軍へと移行させます。その移行を正当化する法的根拠が (旧)日米安保条約 です。それゆえ、日本に駐留するアメリカ軍の主目的は 冷戦に勝利すること でした。
 冷戦に勝利するために駐留するアメリカ軍ですから、日本防衛など二の次。それを懸念した岸信介総理が「日米安保条約にアメリカ軍による日本防衛義務を盛り込みたい」として結んだのが現在に至る (新)日米安保条約 です。ところが、その安保条約にも「アメリカが日本を守る」との明文規定はありません。

 ところが、岸信介政権以来、自民党政権は「日米安保条約で、アメリカは日本に軍隊を駐留させるが、アメリカはイザというときは日本を守ってくれる」と言い続けて来ました。これが 安保幻想 です。確かに、冷戦時代であれば、安保幻想にも一定の意味がありました。なぜか。
" 冷戦時代は世界を2分して米ソが対峙している状況ですから、どこか一箇所でも相手側に奪われるようなことがあれば、それは自陣営の崩壊につながりかねないから " です。特に、極東地域はユーラシア大陸東岸を見渡せる位置 --- 同地域を攻撃できる位置です。つまり、極東地域の日本は戦略的重要拠点なのです。
 ゆえに " アメリカもやすやすと日本を手放さないだろう ⇒ アメリカは日本を守るだろう "、これが日米安保条約に基づく自民党の安保政策でした。しかし、冷戦は終了し、東西両陣営の対峙もなくなりました。あるのは、アメリカ、ロシア、中共の3大国の 力による支配構造 です。

 こうなると、3大国共に最優先するのは自国の利益。この意味でトランプ大統領の「アメリカファースト」は正直な直言ですし、オバマ前大統領の「世界の警察官を辞める」宣言も同じ意味と考えるべきです。従って、日米安保条約を " アメリカが日本を守る " 条約と思うのは、ただの幻想に過ぎません。
 繰り返しますが、国と国の軍事同盟条約は、あくまでもそれぞれの国が自国の利益を考えて結ぶものであり、イザというときに同盟国が助けてくれると思い込むのは幻想に過ぎません。まして、冷戦という東西2大陣営の対立構造が終わったのですから、現在は3大国を含め自国ファーストの時代になっているのです。
 逆説的ですが、このような自国ファーストの時代だからこそ、3大国以外の国々 --- 自国のみで自国の防衛ができない国々こそ 国際連合 という " 集団安全保障体制 " を強化していく他に、自国の安全保障をまっとうすることができません。つまり、日本のような中規模の国こそ国連重視に舵を切るべき、なのですよ。(2019/03/04 記述)
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