家に戻った僕は、早速学生村のパンフレットを開いてみた。
それは、高校生や大学生に、落ち着いた学習環境を提供する村のことだった。
ただ、村といっても、特にまとまっているわけでもなく、民宿のような施設が点在しているだけだった。
そして、特別な施設や、受験に関する講義が開かれるのでもない。
とにかく、24時間、誰にも邪魔されず、勉強に集中出来るというのがセールスポイントだった。
三度の食事以外に何の拘束もない。
完全に、外部からシャットアウトされた環境で、自分がやりたいことをやれるのだ。
場所は、長野県、群馬県、新潟県の3つの県にあり、一応の希望は聞くようだが、最終的にはどこに行かされるかは分からないのである。
果たして、近くにお店も何にもない、テレビすら映らないような山奥で、一ヶ月間過ごせるのだろうか。
僕は、不安になって、どうしたものか、岡村に聞いてみることにした。
翌週に再び、僕は岡村と会った。
『どうだ、迷いは消えたか?』
『うん、ありがとう。もう大丈夫だよ』
『ところで、学生村のことなんだけど。お前のことだから、何か考えがあるから決めたんだよな』
『うん、僕も最初は予備校に行こうと考えてたんだよ。でもね、講習受けると、受けっぱなしには出来ないから、その予習復習に結構時間とられちゃうんだよね』
『ああ、確かに聞いてるだけじゃ効果がないよな』
『そうなんだ。それに、座って聞いてるだけでも、やってるような気持ちになって、始末が悪い』
『でも、一人だけで山にこもって、何やろうとしてるんだ。一ヶ月間も』
『うん、僕はこの一ヶ月間で、志望大学の過去問を全てやっつけてしまおうと計画してる』
『それに、一ヶ月間もかかるのか?』
『うん、今一応、5つの大学に絞ってるんだけど、過去三年間の全科目に本気で当たると、丁度それくらいかかるんだよ。一週間に一つの大学を考えてる。それでも、足りないかも知れない』
『過去問にそれだけかけるのか……』
僕には、言うべき言葉が見つからなかった。
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