今回、オランダの安楽死問題に端を発して、再度高瀬舟を読んでみました。
学生の頃に読んだ作品を、もう一度読み返すことがたまにあります。
そして、新発見。
この小説は安楽死について、医師でもある作者が問題提起したことだけに注目されますが、もう一つあったんですね。

それは、喜助の生き方に対して、つぶやいた同心の言葉。『喜助は足ることを知っている』です。
『足ることを知る』とは、どのような状況にも満足する態度ですが、現代の社会、特に日本人にはとても大切なテーマではないでしょうか?
不平不満、クレームが横行する現代、常に欲望が渦巻いて、満足感などどこかに置き忘れてしまってます。
勿論、それらの感情が人間を進歩させてきたことは百も承知です。
が、限度というものがあるでしょう。
足ることを知らなければ、感謝の気持ちは生まれず、幸福は永遠に得られないでしょう。