今日はダイエットの基礎知識として抑えておきたいBMAL1(ビーマルワン)についてまとめてみます。
BMAL1の主な働きは、脂肪をつくり貯め込むための酵素を増やしたり、脂肪を分解してエネルギーに変えるための酵素を減らすようDNAに対し働きかけること。
つまり、BMAL1の量が多いほど脂肪がたまりやすいことになります。
体内におけるBMAL1の量は、一定ではありません。
夜間に増えて、昼に減少します。
そのため、
「夜寝る前に食べると太る」
と言う、よく聞く話の裏付けとして引用されています。
けど、これ、本当なんでしょうか?
ググると、「夜寝る前に食べると太る」は、いまや当たり前ではありません。
1997年にBMAL1が発見・命名されてから、さまざまな説がまことしやかに流布されています。
「寝る前に食べると太る」のが本当か嘘か。
BMAL1という切り口から考察してみたいと思います。
◎BMAL1とは~Brainand Muscle Arnt-like 1~
1.BMAL1とは~Brain and Muscle Arnt-like 1~
みなさんは、誰似ですか?
わたしはポロサップを名乗っていますが、ボブサップには似ていません。
ボブサップはインテリマッスルであり、日本のショービジネスが造り上げたリング上の野獣=ビーストというアイコンです。
ポロサップはボブサップに語感が似ていますが、ローマ字表記でPOROSAPであり、SAPPORO=札幌のアナグラムです。
いまのところメタボリーマンとしてのアイコンでしかありません。
わたしの顔は鼻だけなら小日向文世に似ています。
同じ北海道出身ですしね。
鼻を大きくする遺伝子が私にも流れているかもしれません。
余談はさておき、メタボリーマンであるわたしの遺伝情報に「脂肪を蓄える仕組み」もしっかりと入っているであろうことは、間違いありません。
きっと、みなさんにも入っています。
その「脂肪を蓄える仕組み」に、BMAL1が関与しているという説がまことしやかにささやかれています。
もともと、BMAL1は埼玉医科大学医学部生理学の池田正明教授が1997年に発見、命名したものです。
脳と骨格筋(Brain and Muscle)を中心に発現している時計遺伝子(Arnt)のような(like)働きをする、初めて見つかったタンパク質だったので、
~Brain and Muscle Arnt-like 1~
の頭文字をとってBMAL1と命名したそうです。
池田正明教授の論文は、BMAL1というタンパク質が、人間の体内時計に深く関与しているという内容でした。
太るとか痩せるとか、ましてやダイエットに関する論文ではなかったのですが、それから20年余り、玉石混淆、さまざまな説が展開されていくことになるのです。
2.パー、クライ、クロック、ビーマルワンの四角関係
BMAL1はエネルギーを脂肪細胞に溜め込もうとする働きがあります。また、その働きをおこなっている間、脂肪の分解作用を抑えます。
ネットでは、体内に脂肪を溜め込む司令塔のような役割を担っているという記事も書かれていますね。
BMAL1は「肥満遺伝子」とも呼ばれているようです。
そんなBMAL1ですが、もうひとつ大きな特徴があります。
それは、体内に存在する量が24時間の中で変わるということです。
脳内の体内時計のリズムを保つ時計遺伝子と言われる主要なものに、BMAL1のほかに、クロックという蛋白質があります。
朝の光を感知すると、クロックとBMAL1が発動し、今度はパーとクライという蛋白質を作り出します。
このパーとクライは、クロックとBMAL1の働きを妨げる物質です。
クロックとBMAL1は時計遺伝子の正の制御因子です。
パーとクライは時計遺伝子の負の制御因子です。
1日24時間サイクルで正と負の制御因子が増減を繰り返し、体内時計のリズムが刻まれています。
時計遺伝子が刻むリズムは、クロックとBMAL1、パーとクライが24時間周期で、互い違いに増減するという変化そのものと言えます。
時計遺伝子に関わる蛋白質の中で、時間の経過によってはっきりと増減のカーブを描くのはBMAL1です。
BMAL1の量が最も増すのは午前二時です。
BMAL1の量が最も減るのは午後二時です。
BMAL1が増える時間帯に脂肪になる糖質を摂れば、体内に蓄積されやすくなります。逆にBMAL1が減る時間帯であれば、糖質を摂っても体内に溜まりづらいということになりそうです。
そのため、
「脂肪を蓄えるBMAL1が増える夜は、食べると太る」
「脂肪を蓄えるBMAL1が減る昼は、食べても太らない」
と、ネットではさかんに言われています。
はたして、それは本当でしょうか?
3.食べ物が吸収される時間=最大20時間
「脂肪を蓄えるBMAL1が増える夜は、食べると太る」
「脂肪を蓄えるBMAL1が減る昼は、食べても太らない」
上記の概念には、食事の質と、消化吸収にかかる時間のことが、すっぽり抜け落ちています。
お米などの炭水化物を摂ると、血糖値はすぐにあがりはじめ、60分ほどで最大になり、180分ほどで正常値に戻ることが知られています。
なので、BMAL1が多い夜間におにぎりを食べたりすれば太るというのは、理論上も、経験則的にも、間違いないでしょう。
一方で、肉を食べた場合はどうでしょうか。
たとえば、焼き肉です。
次のグラフをご覧ください。
白米と焼き肉では、こんなにも血糖値の上がり方が違うのです。
脂肪になるのは、糖質です。
肉などのタンパク質や脂質ではありません。
それはこちらの記事で書いています。
☟MEC食やプロテインダイエットの体験記☟
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血糖値が上がらない肉を、BMAL1が多い夜間に食べたところで、血液中に血糖がないためBMAL1が脂肪細胞にエネルギーを取り込む=太ることはありません。
摂取した食べものはおもに小腸で栄養が吸収されます。食べものが胃を通過して、さらに小腸に届いて、そこでようやく吸収されます。
小腸の手前、胃で消化するだけでも数時間かかります。
また、炭水化物とタンパク質は別の消化酵素で消化され、消化スピードも異なるため、一度に全部は消化できません。
MEC食やプロテインダイエットのような、ある種の置き換えダイエットも、食事では一度にさまざまな栄養素が摂り入れられるので、消化時間は一様ではありません。
さまざまな栄養素が摂り入れられると、消化・吸収時間は延びて行きます。
肉を多めに摂った場合は20時間以上かかることもあります。
別に悪いことでありません。
そういうふうにわたしたちの体はできています。
吸収の大舞台は小腸ですが、小腸での吸収も一瞬で終わるわけではありません。
なんと7時間から9時間ほどかかります。
20時に食べた肉などのタンパク質が消化・吸収されるまでには、胃で4時間、小腸で7時間かかるので、早くて11時間かかるということになります。
20時の11時間後は朝7時です。
BMAL1が減っている時間帯です。
24時に食べた肉は、同じ理屈で、昼の11時に吸収されます。
BMAL1が減っている時間帯です。
あらためて考えてみます。
「脂肪を蓄えるBMAL1が増える夜は、食べると太る」
これは本当でしょうか?
4.「夜寝る前に食べると太る」の真偽
「夜寝る前に食べると太る」
これは、嘘ではないかもしれませんが、本当でもありません。
ここまで読まれた方はもうお気づきのことと思います。
夜寝る前に食べたら太るのではありません。
「BMAL1が増えているときに食べたものの消化・吸収がピークを迎えたなら、比較的脂肪は増えやすい」
と言うのが正しいと考えられます。
別の言い方をすれば、BMAL1が増えている夜間に、白米など血糖値がすぐに上がる食事を摂れば太りやすいけれど、肉などのような血糖値があがりずらい食事をとった場合は、比較的太りずらいと言うことになります。
そうしたBMAL1と脂肪の関係を論じた論文はいくつもあるようです。
たとえば2003年には、BMAL1は脂肪の形成に直接関与しないけれど、脂質代謝に加え、脂肪分解作用を抑制し、脂質、特にコレステロールの蓄積に関与することが推察されるとの論文が発表されました。
http://ci.nii.ac.jp/els/contents110004693101.pdf?id=ART0007430621
これはBMAL1の発見から6年後に、とある学生によって発表された論文です。
学生だからといって、適当な論文とたかをくくるのは早計です。
続く2007年。日本大学において、太ったマウスの脂肪組織でBMAL1発現量が顕著に増加すること、またその一方で肝臓ではこの増加が認められないことが明らかにされました。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590077/
ここいらで、BMAL1はいよいよ脂肪との関係が深そうだということが分かってきます。
そして2015年。
同志社大学により、BMAL1と脂肪の関係にさらに一石投じられます。
それは、運動トレーニングによる脂肪分解反応の増強効果は、BMAL1の発現がピークのときの運動トレーニングの方が、ボトム時の運動トレーニングに比べて効果的であるという論文発表です。
端的に言えば、痩せたければBMAL1が多い夜に運動するのが良いと言うことです。
さらに、太陽を浴びると減り、夜暗くなると増加するメラトニン(通称、夜のホルモン)が、脂肪分解反応も亢進させる(高い度合いまで進める)事を明らかにしています。
これも簡単に言ってしまえば、痩せたければ夜暗い場所で過ごしてメラトニンの分泌を適正にしつつ、適度に運動をするのが良いということになります。
http://izawalab.wixsite.com/izawalab/study
まとめると、
■痩せるるために気にするのは食べる時間ではなく、食べるもの
夜に食事をがまんするのはナンセンス。
ダイエットを辛くするだけ。
お腹が減ったら血糖値があがりずらい食品(MEC食など)を摂って、満腹感に包まれて寝る方がダイエットも間違いなく長続きします。
夜がまんして、翌日の朝や昼に甘いものを食べ過ぎたらもともこもありません。
昼間は大丈夫なんて思って食べた分が、夜に吸収のピークを迎え、BMAL1の働きで脂肪となって蓄えられてしまうかもしれません。
■痩せるには昼夜規則正しい生活をして夜に運動
夜になったら部屋を暗くして運動をすると、メラトニンの効果とあいまって、脂肪が分解されやすくなりそうです。
仕事を終えて家に帰ったら、シャワーを浴びて部屋を暗くして、ダイエット効果の高い運動をする。
ただ、睡眠に差し障るので、寝る3時間前までには激しい運動は終えるようにしましょう。
5.ポロサップの個人的な体験
深夜食べるラーメンは太りますよね。
深夜食べるカレーライス。
深夜食べる天丼。
もれなく太ります。
如実に次の日の体重に跳ね返ります。
いつものわたしの失敗パターンですね。
基礎代謝の記事で触れましたが、この世の中にエネルギーの錬金術はありません。
人間は食べた分しか動けません。
逆もまたしかりで、食べた分動かなければ、どこかにエネルギーとして蓄積されます。
☟基礎代謝の記事☟
BMAL1は脂肪を蓄える・消費するメカニズムに関連していることは、近年の研究から間違いないでしょう。
こうしてあらためて調べてみて、個人的な体験に照らし合わせて考えてみると、深夜どうしても食べたくなった場合は、BMAL1を意識して食べないのではなく、食事の質を変えることに注力することの方が大切ということですね。
もちろん、糖質を大量に含むラーメン、カレーライス、天丼を飲んだ後に食べるなんて、論外と言うことです。
深夜の焼き肉は、ご飯抜きなら、どうも、ダイエット的にはOKそうです。
そこには、また別の問題があるようにも思いますが・・・。
つまるところ、BMAL1を調べてみて分かったのは、規則正しく生活して、糖質に気を付けるのが吉、ということでした。
MEC食やロカボって、BMAL1の観点からも理にかなっていたんですね。
今日はこの辺で。
良い日をお過ごしください・・・☆