8/15(木)降っても晴れても台湾一周の旅 2日目〜その2~ | ちいたろうのお出かけ日記

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 臺中站10:52発の區間3197列車に乗り込みます。
「世界の車窓から。今日は、台湾の東側を南へ走ります」
と、石丸 謙二郎氏のナレーションが聞こえてきそうです。最初の目的地は、彰化。前回と似た行程になってしまいますが、このルートを通るからには、やはり彰化で肉圓が食べたいのです。


 彰化站から先は、ようやく今回の旅の目的の一つ、莒光号に乗ります。乗り換えの待ち時間は1時間半ほど。それだけあれば、肉圓を食べてから駅前をぶらぶらしても十分間に合うはずです。
 でも、そんな見通しは甘かった。途中から窓の外は大雨になり、列車も速度を落として運転しています。
「肉圓は食べられるのか?」
11:18、定刻よりも4分ほど遅れて彰化站に着くと、外は本降りの雨です。傘なんか役に立たないのではないかと思うほどの降り方ですが、ここでまごまごしていると後の予定が変わってしまいます。最近では莒光号の本数がずいぶんと減っていて、12:47発の列車を逃すと、次の莒光号は19:39発。もちろん、それまでに出発する區間車や自強号で行くこともできるのですが、今回の旅ではできるだけ莒光号に乗りたいのです。
 駅舎の軒先から、みんな外の様子を伺っています。中には、すでに合羽を着込んでいる人もいました。私も覚悟を決めて、日本から持ってきた小さな折り畳み傘をさして駅前の広場に出ます。


 できるだけ屋根の下を歩くようにしたのですが、肩やリュックが濡れてしまいました。夏の暑い中ではあるものの、やはり雨に濡れるのは気持ちのよいものではありません。
 数分歩いて彰化老担阿璋肉圓へ。とりあえず肉圓。以前来た時は香菜が入れ放題だったのですが、テーブルの上に見当たりません。その代わりなのか、テーブルには何やらマヨネーズのような調味料が置かれています。これをちょっと入れて食べてみると、ピリッとした辛味が加わって、これはこれで美味しい。でも、やっぱり香菜が欲しいのです。


 それから、勧められるがままに注文した貢丸湯をひと口いただきます。温かいスープを飲むと、気持ちがスッと落ち着いていきます。店に入った時には、
「せっかく彰化に来たのに残念だ」
と思っていたのですが、並ばずに店に入れて、こうしてのんびりと肉圓とスープをいただけるのは、もしかすると雨のおかげかもしれません。
「雨も、悪いことばかりではないかもしれないな」
と思えてくるから不思議なものです。
 本当はこの後、駅のまわりを歩いてみる予定でしたが、この雨の中をさすがに歩く気にはなれず、セブンイレブンで茶葉蛋とビールを買ってデザートタイムを過ごすのでした。


 彰化站まで戻ると、すっかり濡れねずみ。靴の中まで雨水がしみ込んで、靴下が濡れているのがわかります。


 12:47発の莒光511列車は、若干遅れてホームに入ってきました。乗り込むと、私の席は車両の端の一番前の席。やがて金属製のベルが鳴り響き、ドアが閉まる音がします。客車列車らしく、独特のゆっくりとした動きでホームを離れていきます。


 こんな風にゆっくりと動き出すと、「いよいよ始まるぞ」という、なんともいえないワクワク感を味わうことができます。飛行機のプッシュバックや船が港を離れるときの長声一発などもそうです。一方、電車が発車する時には、あまりワクワクしません。それは、あまりにスムーズすぎるからかもしれないと、ふと思うのでした。
 やがて、莒光号はスピードに乗って軽快に走ります。電車のようにキビキビとは走らないところがなんとも心地よい。 ただ移動するだけなら、特急の方が早く到着することができます。台湾なら、高鐵(新幹線)だって走っています。でも、どこか懐かしさを感じる客車独特の音、揺れ、振動は、最近の電車にはない味わいです。それを、旅情と呼んでもいいのかもしれません。
「なんでこんなにも懐かしいと感じるんだろう」
自分の記憶をたどってみると、行き着いたのはテレビアニメの銀河鉄道999。星野鉄郎という少年が、タダで機械の体をくれるという星まで、メーテルとともに旅をする物語です。
 惑星の自転周期に合わせた長い停車時間。そこでさまざまな物語が生まれます。そして、発車のベルが鳴り、ゆっくりと列車がゆっくりと動き出す。
「あぁ、あんな旅がしたかったんだ」
もちろん、莒光号はアニメに出てくる銀河超特急999よりもはるかに快適なのですが、最新の鉄道車両にはない味わいがまだ、ここには残っているのです。


 臺南站には15:00到着の予定でしたが、列車を降りて駅の電光掲示板を見ると4分遅れと表示されていました。基本的に時間通りに運行される日本からすると珍しいような気もしますが、こちらではそんなに珍しくないのか、慌てるような人もいなければ混乱している様子もありません。さも当たり前といったように、みんな出口へ向かったり、別の列車に乗り換えたりしています。


 私も出口へ向かい、改札を抜けて駅舎の軒先まで出てみると、外はものすごい雨。この猛暑の中なのに、駅前のビルの電光掲示板は27℃を表示していました。当初の予定では、ここからバスに乗って臺南の街中へ行き、晩ごはんを食べてから高雄に行くつもりでした。でも、この雨の中、駅から離れた臺南の街の中心部まで行くのは億劫です。


 空は少し明るくなってきましたが、雨はまだ、止みそうにありません。
「しばらくここで雨が止むのを待とうか……」
 臺南站の駅舎は、1936年(昭和11年)竣工の年代物。素敵な建物ではあるものの、現在は工事中で、歩き回れる範囲はそんなに広くありません。時間をつぶすにしても、限界があります。


 ここで降りてしまったのはもったいない気もしますが、仕方ありません。改めてきっぷを買って、高雄まで進むことにしたのですが、この判断が、その後の自分を救うことになるとは、このときはまだ思ってもいなかったのです。