9:44、出発地の観光案内所の前に戻ってきました。名残惜しいですが、一時間ほどの無料観光ガイドはここで終了。するとガイドのTさんに、
「お時間ありましたらぜひ、湯築城跡にも行ってみてください」
と勧められました。予約しているバスの発車時刻まではまだまだ時間があるので、行ってみることにします。道後温泉から湯築城跡は、目と鼻の先です。
まずは手始めにと、湯築城資料館へ。入り口で連絡先の記入を求められるのは、昨今のコロナ対策でもう当たり前になりました。すると、係員のおじさんが、
「書いたらすぐ奥に来てください」
と急かすのです。何かと思えば、他の見学者と一緒に(といっても一組の親子がいただけだったが)解説VTRを見せるためだったようです。
とはいえ、ここが誰の城か、いつの城か、どんなことがあったのかもまったくわからずにやってきた私にはちょうどよかったかもしれません。中世の伊予国の守護であった河野氏の城であったこと。河野氏が源平合戦で源氏方について、功績を挙げたこと。最後は豊臣 秀吉の四国攻めにより、小早川 隆景に湯築城を明け渡したことなど、わかりやすくまとめてられていました。
VTRが終わり、館内の展示物を見ようとすると、すかさずさっきのおじさんがやってきて、レーザーポインタで指し示しながら解説を始めます。
「中世の平山城として、価値の高いものです」
と胸を張るおじさん。やはりこういった人の話を聞くのは嫌いではありません。一人でぶらりと歩きながら、見たいものだけを見るのが私の旅のスタイルなのですが、ガイドツアーの参加もたまにはいいものだと思うのです。
資料館を出て、復元された武家屋敷などを見て回ってから道後温泉本館へ向かいます。昨日は椿の湯に入ったので、今日はこちらにと思い、入り口にいた係員に聞いてみると、「一番早くて14:30のご案内です」とのこと。あと4時間ほどあります。さすがにそれでは高松行きのバスに間に合わないので、今日も椿の湯に向かうことにしましょう。
商店街を物色していると、お土産屋さんのおばちゃんに鯛めしを勧められました。
「この前、岸田総理がかごいっぱい買っていったのよ」
総理大臣が買ったからどうということはないのですが、そのひと言で観光客が買ってくれるのであれば、立派な地域貢献を果たしたと言えるでしょう。
椿の湯は、今日は待たずに入ることができました。脱衣場には立派な彫り物をした方がいて、同じタイミングで浴室に入ります。その姿に驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、総じてそういった方々のマナーはよいという印象です。彼も、他の利用者が使ったであろう桶や椅子を片づけて出て行かれました。もちろん、そのスジの方かどうかはわかりませんが、あくまでもここは地元の湯。我々観光客はそこにお邪魔させていただいているのです。
道後温泉駅に戻り、11:33発の電車で大街道へ戻ります。車番を見ると、朝、乗ってきたのとまったく同じ車両。ついつい、面白みがないなと思ってしまうのでした。
昼ごはんは、ガイドブックにも必ず載っている郷土料理の五志喜さんへ行ってみようと思います。貧乏性で、食事もついつい安いものを探してしまうのですが、それなりの値段で美味しいものをいただくのもよいでしょう。それに、ランチタイムであれば、夜よりも割安に食べられそうです。
12時前にお店に着いたのですが、すでに30分待ちだと言われました。それなら受付に名前を書いてもらい、ホテルへ行って預けている荷物を引き取ってくることにしましょう。
お店に戻って待っている間にちらりと、22名の団体さんが入られていたという話が聞こえました。それは満席になるのも無理はありません。結局、お店に着いてから20分ほどで席につくことができました。
ダメ元で、限定20食という松山鯛めしランチがあるかどうかと聞いてみると、まだ大丈夫だと言います。なんという幸運! 一緒に小さなにゅうめんもつけてもらいましょう。
しばらく待ってやってきた鯛めしは、ふわふわの鯛の身とその味が染みたごはんが絶品。昨日の鯛めしも確かに美味しかったのですが、こちらはそれとはまた別ものです。
にゅうめんも、さすがは五色そうめんの有名店。これなら、看板メニューの鯛そうめんも食べたいところですが、お腹はすでにいっぱいです。松山、また来ることにしましょう。
13時すぎにお店を出て、今日のバスの時刻を確かめると、大街道発で予約していたつもりが松山市駅発で予約していたようでした。危ない、危ない。チケットレスはこういうことがあるから、用心しなければなりません。
何か飲んだり食べたりする余裕はないので、とりあえずいよてつそごう……、じゃなかった。伊予鉄高島屋を覗いてみることにします。
駅前では、坊ちゃん列車が到着したところでした。人力で機関車の方向を変え、客車の入れ替え作業を行います。いつもながら、あれをすべて人力でやるのは大変だろうなと思うのです。
こういう時の時間調整は、ドトールコーヒーショップに限ります。松山のドトールはどうやら2店舗しかないらしく、そのうちの1つが松山市駅前店というから好都合です。しかも、昨年11月にオープンしたらしく、どこを見てもピカピカ。そんな店内で、コーヒー1杯で旅のメモをまとめます。貪欲に歩いて見て回るのも大切ですが、旅の途中でこんな風にひと休みするのもまた、大切な時間だと思うのです。