4月21日NHKアンコール放送で、大江健三郎を放映していた。
私はどうしたことか、3月に入ってからスランプにおちいって、本が読めなくなっていた。
そこで小難しいと言われた大江の本も、息子光のことが書かれている文章なら
と読んでみる気になった。障害のある長男を「イーヨー」と呼び20歳になる
までの暮らしぶりをウイリアム・ブレイクの詩集と会わせて綴った
「新しい人よ眼ざめよ」である。
父親が海外出張中には「パパは死んでしまいました」と絶望したり
養護学校の寄宿舎に入所するときには「ボクが居ない間、パパは大丈夫でしょうか?」
と心配したり、父親とぞっこんな息子の様子がよくわかる。
強烈な場面は大型台風が接近中伊豆の別荘へ家族で出掛けるのを躊躇していたら
「ボクは伊豆へまいろうと思います」と言ってその出で立ちが凄い。
リュックを背負い1mほどある黒髪の人形を自分の身体にくくりつけていた。
父親は決死の覚悟で電車に乗り別荘に向かった。
電車の中ではジロジロ見られたでしょうに。
かつて自分を誘拐した人には「悪い人です」と断言したり
どこまで理解しているのか不思議だ。両親と3人の子供たちの苦労も
大変だろうが、イーヨーの一言で笑いも生じている。
2023年の今、父親が居なくなって本当の「パパは死んでしまいました」に
なってしまった。60歳になった光さんはどうしているのか。