しんどいイベントがようやく終わり、仕事も一山越えた感じ。どんな仕事でも終わりはあるものだなあ。しかし、明日は依然として見えないのであった。



山田風太郎「八犬傳」読了。自由奔放な想像力が生み出した八犬伝の世界と、吝嗇で神経質な作家・滝沢馬琴の恵まれない私生活が交互に描かれる。激しい落差があるようで、どこか通底する虚実の対比が面白い。馬琴と、彼が唯一心を許している友人・葛飾北斎の業の深い人生の描写がいいんだなあ。だけど、途中でちょっとダレるかも。


続いて狂気の作家、ジム・トンプスンの「内なる殺人者」。田舎町で保安官を務める主人公が、一人の娼婦と出会う。彼女はマゾヒストで、主人公が幼いころから封印してきた暴力への欲求を解き放ってしまう…。

相変わらずキレてます。男は完全犯罪のために彼女を素手で殴り殺すんだけど(ひい)、瀕死の彼女がよろよろと立ち上がり、「お、お願い。最後のキスを…」とつぶやくシーンが…。よくそんなこと思いつくなあ。まあ、これだけ読むと変態小説みたいに思うかもしれないけど、とある男の荒涼たる魂の彷徨を描いた興味深い本です。


あ、荒涼たる魂の彷徨、と言えば、シドニー・ポラック監督「大いなる勇者」を見た。1850年代のアメリカ。文明に背を向け、自由を求めて山奥へと向かったジュレミア・ジョンソン(ロバート・レッドフォード)。しかし、山の自然の厳しさと、アメリカ先住民族との果てしない抗争に彼は少しずつ疲弊していくのであった…。

ううう、まったく人生はままならんものよなあ。美しいが、あまりに過酷な自然の描写と、すべてを失って徐々に摩耗していく男の悲哀をロバート・レッドフォードが好演してました。うん、いい映画だ。