イーストウッド監督の最新作「グラン・トリノ」。

妻に先立たれた老人、ウォルト(クリント・イーストウッド)。偏屈な彼は子や孫ともうまくいかず、隣家のアジア系住民たちの無軌道な暮らしぶりに もいらだちを募らせていた。ある日、隣家の内気な青年タオが不良仲間にそそのかされ、ウォルトの愛車グラン・トリノを盗みに入るが、彼に追い払われる。タ オの一族は深く恥じ入り、タオをウォルトの元で下働きさせるために送り込む。素直なタオにウォルトは次第に好感を覚えるが、不良たちは自分たちを裏切った タオ一家に容赦ない報復を行う。ウォルトは一家を救うために行動に出ることを決意する…。

いいですね。感情が高ぶったウォルトがはらむ狂気を、ギラリとした目の動き一つで表わすイーストウッドの演技力に感服。よけいな演出が一切ないだ けに、全編に緊張感がびりびりみなぎっています。ウォルトが朝鮮戦争の従軍経験があり、十数人の朝鮮人を殺している記憶が、タオ一家と付き合う際の葛藤に なっている点もいい。実際、ベトナム帰還兵とかは、米国に山ほどいるベトナム系米国人と付き合う際、どんな葛藤を抱くんだろうか。

西部劇や「ダーティー・ハリー」で名をなしたイーストウッドは、暴力とは何か、それは人をどう変えていくのか…を常に考え続けているようですな。シンプルで深い味わいのある作品でした。



精神科医の春日武彦の著書が好きなんであります。この人はものすごく博識で、古今東西のえらく興味深い小説、マンガ、詩歌を次々と引用してくる。それで、今日は著書をひっくり返して、片っ端から引用されてる小説などをメモしてみた。

たとえば、「奇妙な情熱にかられて」(集英社新書)には、舞踏家の飯田茂実が書いた「世界は蜜でみたされる」(水声社、1998)という本が引用 されてる。「一行物語集」と副題がついた、この本はたった一文(ワン・センテンス)で表した333の物語が収録されているのだという。

「神様!と八百屋が叫ぶと、天井を突き破って大根が落ちてきた。」

「その星では、経験の重さが各人の体重を決めており、悩み苦しんできた者は地響きを立てて歩いている。」

なんていう、素晴らしく面白い文章が引用されてるんだが、おおおお、読みてーよー。こんな本、どっから見つけてくるんだ??いろいろ買ってみようっと。



ズゴックを完成させ、ちばあきお「プレイボール」を読みふける。そんな一日。