No Looking Back


写真は春日武彦著「顔面考」(紀伊國屋書店)。この装丁、おっかないけど、かなり気に入ってたりする。

前書きには「本書では『いかがわしさ』『グロテスク』『珍奇さ』といった感覚を重視しつつ、顔にまつわる考察を進めていきたい」とある。例によっ て、春日武彦が古今東西のマンガ、小説、写真、ありとあらゆるものを引用しつつ、われわれを当惑させずにはいない”顔面”の持つ奇妙な特質に言及する。

2枚目は本文に掲載された図版で精神病患者の顔写真とイラスト。右上は「何も食べるな」という幻聴が聞えている女性。左上は幻聴に耳を傾けている 患者。左下は誇大妄想狂。左ページ一番左上は色情狂だそうだ。気味の悪い本、ではなく、なんで顔は人を気味悪がらせるのか、をじっくり考えさせられる本。

顔って不思議だよね。床屋で自分の顔をじいっと見てたりすると、なんかすごく醜く見えてきて落ち込んだり。異様にきれいな人、地味な性格なのにな ぜか色気むんむんの顔の人、何だかアンバランスな顔の人。あんまり人の顔のことをうんぬんするのは品がいいとはいえないけれど、やっぱり顔ってなんという か、隠微な魅力がある。

そういえば、以前知り合った男性がいて、すごくイケメン(奥さんも腰を抜かすくらい美人)なんだが、この本の話をしたら「実はおれは自分の顔が嫌 いで嫌いで」と言い出した。「えー、何でですか。うらやましいくらい整っているじゃないですか」と言ったら、心底うんざりした顔で「やっぱ分かってもらえ ないですよね。おれの目は人を不快にする目なんですよ」と、きらきらの二重まぶたでため息ついてた。わかんねーよ。うーん、やっぱ不思議。