No Looking Back


書店を物色し、野菜カレーとハートランドビールで夕食。小さな幸せ。このビールは味も、透過光できれいに光る緑のビンも好きなんだが、飲める店があまりないのが玉に瑕ですな。




勝目梓「小説家」読了。バイオレンスロマンの大家と言われた男の自伝小説。貧困家庭に育った遅咲きの文学青年が、女房子どもを捨てて愛人と上京。文学を目指すが挫折し、やがて娯楽小説で名をなしていく。

不思議なおもしろさ。勝目がバイオレンスロマン作家だと知らなければ、退屈きわまりない小説かも。古色蒼然とした私小説の文体で、おまけに冗長だ し。でも、「暴力とセックスを月産1000ページも書きまくった作家が本当に書きたかったのは、こんな文体なのか」などと考えるとえらく味わい深いんだ よ。あと、愛人たちとのセックス描写が非常に地味なのも面白かった。やっぱ我が身のこととなるとね。

勝目はこの小説を書いているときに楽しかったのかな、それともつらかったんだろうか。
「純文学はアマチュアでも書けるが、娯楽小説はプロでないと書けない」という一文は、勝目の職人としての自負とコンプレックスがない交ぜになっていて、非常に興味深かったす。

さて、次はマンシェット「地下組織ナーダ」を読むぞ。