ブルースブラザーズをBGMにpop popの二人を乗せた車は２３号線を走っていた。
今夜のライブは刈谷市にあるライブハウス、サンダンス。pop popにとっては初めての場所だ。いつもは週末の土曜日にライブが行われているサンダンスだが、「アコースティックナイト」として金曜日の夜にライブが企画された。その第一弾として今回pop popが出演となったのである。
ライブがスタートする夜の９時頃には２０人以上のお客さんが店内にいた。いつも小さなお店で演奏する事の多いpop popにとっては「お客さん、入ってるなー」という感じなのだが、それでもサンダンスからしてみればぼちぼちといった感じだった。そして、そのお客さんたちの中にpop popの事を知る人は誰ひとりとしていなかった。
しかも今夜は金曜日の夜。お店に来ている人たちはライブが目当てではなく、親しい友人たちとこの店のおいしいスペアリブやピザを食べて、うまい酒を飲みながら語らいあうためにやってきている。
騒ぎ声のとびかう中、二人はステージにたち、ライブがスタートした。
ライブの１曲目はpop popのライブではオープニング曲の定番ともいえる「Ol'55」だった。店の客はライブが始まっても自分たちにとってはBGMに過ぎないとばかりにさわいでいたが、yasakaは不思議とピアノをひきながら、その騒ぎ声を楽しんでいた。
ーもしかしたらトム・ウェイツもこんなシチュエーションの中でこの曲を歌っていたかもしれないーそんな風に想像しながらyasakaはピアノを弾いていた。
歌っているEmilyも同じように楽しそうだった。それほどサンダンスの雰囲気はふたりにとってまだ見た事のないどこかのアメリカの酒場をイメージさせる何かがあった。
ステージから見て左側の奥にいた客たちは自分たちの騒ぎを楽しんでいたが、カウンター席にひとりで来ていた男の客や、カウンターよりさらに向こうのテーブル席のカップルは二人のステージをじっと聞き入っていた。初めての場所で、自分たちの事を知らない人たちがpop popの音楽にじっと聞き入ってくれている事がEmilyもYasakaも嬉しかった。
最初のステージが終わった後でひとりの男性が二人に声をかけてきた。Emilyの歌声を聞いていてノラ・ジョーンズを思い起こさせるとその人は言った。
２回目のステージが終わった後にはカウンター席の男性客二人がすごく気に入ったと話してくれた。
ステージが進むにつれ、少しづつサンダンスの店内はpop popの音楽に耳を傾けてくれる人が少しづつ増えていった。
最後のステージ、最後の曲の「What's going on」が演奏されていた時、
サンダンスのお客さんのほとんど全ての人がpop popの演奏に耳と体を向けていた。
演奏が終わると大きな拍手とともにアンコールの声がかかった。その声にこたえて二人はサム・クックの「You Send Me」を演奏した。
その後、さらに先日結婚したばかりという男性客からのリクエストで「In My Life」を演奏して、サンダンスでの初ライブは幕を閉じた。
ライブを終えた後、店のマスタ－がとびきりの笑顔でふたりを迎えてくれた。
「すごく良かったよ！聞いてて鳥肌がたったよ！」
店にもうけられたバンドへのカンパの箱には次々とお金がなげこまれた。
ふたりに酒をふるまってくれた男性客もいた。「この近くに住んでて前から気になってたんだけど、今日はじめてきたんだ。今日来てほんとによかったよ」と嬉しそうに話してくれた。
時計の針が深夜１時をすぎた頃、二人が帰ろうとして店を出ると、外はすごい霧につつまれていた。
霧の中をおそるおそる車を走らせながら、yasakaが言った。
「まるで夢の中を走っているみたいだ。これで霧を抜けたら全てが夢でした、なんて事ないよなぁ？」
Emilyも笑いながら、その言葉にうなずいた。
それほど二人にとって今夜のサンダンスでのライブは夢に思えてしまうほど最高の夜だった。
霧が晴れた時、ふたりの目の前に名古屋の夜景が現れた。Emilyは自分の手帳を見た。
スケジュールの３月３１日のところには「サンダンスライブ」と書き込まれていた。ライブの後、マスターがカレンダーとペンを持ってきて「次回はいつにする？」と聞かれ、３月３１日に約束をした。
やっぱり夢じゃないね、とEmilyは今夜の喜びを改めて噛み締めた。
=== SET LIST ===================================
1stage
1. Ol'55
2. helpless
3. The Stranger
4. Wonderful World
5. California
6. Take it to the limit
2stage
1. Takin' it to the Street
2. In My Life
3. Don't think twice, it's Alright
4. You make me feel brand new
5. When A Man Loves A Woman
6. Turn Me On
7. Let it be me
3stage
1. Come together
2. Long Black Veil
3. heaven
4. Close To You
5. Time After Time
6. Will You Love Me Tomorrow
7. Loving you forever
8. What's Going On
-encore-
1. You Send Me
2. In My Life
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今夜のライブは刈谷市にあるライブハウス、サンダンス。pop popにとっては初めての場所だ。いつもは週末の土曜日にライブが行われているサンダンスだが、「アコースティックナイト」として金曜日の夜にライブが企画された。その第一弾として今回pop popが出演となったのである。
ライブがスタートする夜の９時頃には２０人以上のお客さんが店内にいた。いつも小さなお店で演奏する事の多いpop popにとっては「お客さん、入ってるなー」という感じなのだが、それでもサンダンスからしてみればぼちぼちといった感じだった。そして、そのお客さんたちの中にpop popの事を知る人は誰ひとりとしていなかった。
しかも今夜は金曜日の夜。お店に来ている人たちはライブが目当てではなく、親しい友人たちとこの店のおいしいスペアリブやピザを食べて、うまい酒を飲みながら語らいあうためにやってきている。
騒ぎ声のとびかう中、二人はステージにたち、ライブがスタートした。
ライブの１曲目はpop popのライブではオープニング曲の定番ともいえる「Ol'55」だった。店の客はライブが始まっても自分たちにとってはBGMに過ぎないとばかりにさわいでいたが、yasakaは不思議とピアノをひきながら、その騒ぎ声を楽しんでいた。
ーもしかしたらトム・ウェイツもこんなシチュエーションの中でこの曲を歌っていたかもしれないーそんな風に想像しながらyasakaはピアノを弾いていた。
歌っているEmilyも同じように楽しそうだった。それほどサンダンスの雰囲気はふたりにとってまだ見た事のないどこかのアメリカの酒場をイメージさせる何かがあった。
ステージから見て左側の奥にいた客たちは自分たちの騒ぎを楽しんでいたが、カウンター席にひとりで来ていた男の客や、カウンターよりさらに向こうのテーブル席のカップルは二人のステージをじっと聞き入っていた。初めての場所で、自分たちの事を知らない人たちがpop popの音楽にじっと聞き入ってくれている事がEmilyもYasakaも嬉しかった。
最初のステージが終わった後でひとりの男性が二人に声をかけてきた。Emilyの歌声を聞いていてノラ・ジョーンズを思い起こさせるとその人は言った。
２回目のステージが終わった後にはカウンター席の男性客二人がすごく気に入ったと話してくれた。
ステージが進むにつれ、少しづつサンダンスの店内はpop popの音楽に耳を傾けてくれる人が少しづつ増えていった。
最後のステージ、最後の曲の「What's going on」が演奏されていた時、
サンダンスのお客さんのほとんど全ての人がpop popの演奏に耳と体を向けていた。
演奏が終わると大きな拍手とともにアンコールの声がかかった。その声にこたえて二人はサム・クックの「You Send Me」を演奏した。
その後、さらに先日結婚したばかりという男性客からのリクエストで「In My Life」を演奏して、サンダンスでの初ライブは幕を閉じた。
ライブを終えた後、店のマスタ－がとびきりの笑顔でふたりを迎えてくれた。
「すごく良かったよ！聞いてて鳥肌がたったよ！」
店にもうけられたバンドへのカンパの箱には次々とお金がなげこまれた。
ふたりに酒をふるまってくれた男性客もいた。「この近くに住んでて前から気になってたんだけど、今日はじめてきたんだ。今日来てほんとによかったよ」と嬉しそうに話してくれた。
時計の針が深夜１時をすぎた頃、二人が帰ろうとして店を出ると、外はすごい霧につつまれていた。
霧の中をおそるおそる車を走らせながら、yasakaが言った。
「まるで夢の中を走っているみたいだ。これで霧を抜けたら全てが夢でした、なんて事ないよなぁ？」
Emilyも笑いながら、その言葉にうなずいた。
それほど二人にとって今夜のサンダンスでのライブは夢に思えてしまうほど最高の夜だった。
霧が晴れた時、ふたりの目の前に名古屋の夜景が現れた。Emilyは自分の手帳を見た。
スケジュールの３月３１日のところには「サンダンスライブ」と書き込まれていた。ライブの後、マスターがカレンダーとペンを持ってきて「次回はいつにする？」と聞かれ、３月３１日に約束をした。
やっぱり夢じゃないね、とEmilyは今夜の喜びを改めて噛み締めた。
=== SET LIST ===================================
1stage
1. Ol'55
2. helpless
3. The Stranger
4. Wonderful World
5. California
6. Take it to the limit
2stage
1. Takin' it to the Street
2. In My Life
3. Don't think twice, it's Alright
4. You make me feel brand new
5. When A Man Loves A Woman
6. Turn Me On
7. Let it be me
3stage
1. Come together
2. Long Black Veil
3. heaven
4. Close To You
5. Time After Time
6. Will You Love Me Tomorrow
7. Loving you forever
8. What's Going On
-encore-
1. You Send Me
2. In My Life
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