こんな記事を読んだ。全文引用します。
「居場所30年、なお届かぬ声 水無月町「はなみずき部」茶話会」
【水無月町】
8月30日、私鉄水無月線水無月駅西口「くすのき通り」商店街の一角にある居場所「こだま食堂」で、開設30周年を記念する茶話会が開かれた。ひきこもり状態にある人やその家族を支えてきたこの場所を、水無月町立水無月高校の部活動「はなみずき部」の生徒たちが20年近く手伝い続けている。集まったのは本人や家族、卒業生ら約50人。だが顧問の蒔田周平さん(61)の表情は、節目を祝う華やぎとは裏腹に硬かった。
顧問歴28年の蒔田さんは、部員22人と月2回、食堂の清掃や配膳、家庭への訪問声かけを担ってきた。「最初は部活動というより、断られ続ける仕事でした」と蒔田さん。この日、体験談を語るために壇上に立ったのは、7年間ひきこもり状態にあり、いまは町内の運送会社で働く早川直樹さん(34)だった。「あの食堂の灯りだけが、外とつながる糸でした」と語り始めた早川さんのスマートフォンが、スピーチの途中で震えた。中学2年の長男が通う学校からの着信だった。早川さんは会場の隅で小声で応対し、戻ってくると「息子が、また教室に入れなかったそうです」とだけ告げ、それ以上は続けられなかった。
30年前にこの食堂を創設した桜庭みね子さん(74)は「あの子が救われても、次の子がまた同じ場所に立っている」とつぶやいた。現在も相談待ちは12組にのぼり、対象と推計される町内の世帯約110のうち、継続的な支援につながっているのは31世帯にとどまる。
内閣府の2023年調査では、15歳から64歳のひきこもり状態にある人は全国で推計146万人とされ、10年前の調査より増加傾向にある。松濤大学の縣康弘教授(55、社会学)は「地域の居場所は当事者と社会をつなぐ貴重な回路だが、担い手のほとんどが手弁当のボランティアで、支援が届く前に本人が高齢化してしまう『8050問題』の芽もすでに水無月町にはある」と指摘する。
町福祉課の神保由紀課長(46)は「専門職員は2人しかおらず、30年続いた居場所頼みの現状は変えなければならない」と話すが、来年度予算案に新たな人員配置の見通しはまだ立っていない。
茶話会が終わり、片付けを終えた蒔田さんは、暗くなった商店街のシャッター通りを見渡してつぶやいた。「30年やって、僕らが本当に押せたのは何人分の背中だったのか。早川くんの息子さんの背中は、いったい誰が押すんでしょうか」。答えは、まだ誰も持っていない。」
ひきこもり支援の居場所30周年の記念茶話会で、7年間ひきこもり状態だった34歳の男性が体験談を話している最中に、自分の息子の学校から「また教室に入れなかった」という電話が来た、という記事を読んだ。「あの子が救われても、次の子がまた同じ場所に立っている」という創設者の言葉が重い。
全国推計146万人という数字が出ていたけど、数字より息子の着信の方が実感として刺さった。