こんな記事を読んだ。全文引用します。
「書店の灯、絶やさず 閉店の日に元教員が継いだ「わらび堂」」
【松風区】
人口310人ほどの山間の集落・松風区早蕨地区で、52年続いた集落唯一の個人書店「わらび堂」が8月31日、店主の卯月徳蔵さん(87)の引退により一度は閉店を決めた。だが同じ日に定年退職した元松風区立松風中学校国語科教員、芦原伸一さん(63)がその場で経営を引き継ぐことを申し出て、9月1日に新装開店した。
きっかけは偶然だった。8月31日の午後、退職を終えたばかりの芦原さんは、最後に受け持った3年生5人に贈る本を買いにわらび堂を訪れた。レジに立つ徳蔵さんから「今日で店じまいだ」と告げられ、芦原さんは思わずレジ脇の来客帳に「引き継ぎます」と書き込んだという。「教え子に配る最後の本を買いに来ただけなのに、気づいたら店員になっていました」と芦原さんは笑う。
徳蔵さんは1973年の開業以来、蔵書約3200冊を抱え、最寄りの書店まで車で40分かかる集落の窓口として本を売り続けてきた。近年は腰の痛みで棚の上げ下ろしが難しくなっていたという。「本の重みで曲がった腰も、もう潮時だと思っていた」と徳蔵さん。引き継ぎに際し在庫は32万円で買い取られ、店の一角を改装した読書コーナーの費用約15万円は芦原さんの退職金から充てられた。新装開店した初日には区内外から43人が来店した。
波紋は隣接する柚ノ木地区にも広がった。元郵便配達員の男性(70)は、書店まで通えない高齢者のために注文を聞いて本を届ける「御用聞き便」を9月から始めた。芦原さんは「一人で店番をしていたら思いつかなかった仕組み」と感謝する。店を訪れた高津陽菜さん(11)は、新設された読書コーナーで「学校の図書室より本の背表紙が古くて、読んでいると昔にタイムスリップした気分になる」と話した。
芦原さんは当面、週4日、店を開ける予定だ。ただ、芦原さん自身も63歳。徳蔵さんのように体力の限界がいつか訪れたとき、この本の砦を次に継ぐ人が現れるのかどうか、答えを持つ者は集落にまだ誰もいない。」
52年続いた集落唯一の書店が閉店する日、たまたま本を買いに来た定年退職したばかりの元教員が、その場で経営を引き継ぐと申し出た、という記事を読んだ。「教え子に配る最後の本を買いに来ただけなのに、気づいたら店員になっていました」というコメントが良すぎる。
ただ新しい店主も63歳で、次にまた同じことが起きるかは誰も分からない、という締めがリアルだった。