こんな記事を読んだ。全文引用します。

「文具店、三年ぶりに灯る 消防団員の配達、出動のたび消える日当」

【若葉町】

若葉町の下町の路地「弥生小路」に8月20日、文具店「つたや文具」が3年ぶりに営業を再開した。店主の蔦谷純平さん(36)は、平日は宅配委託会社と契約する個人事業主のドライバーとして1件184円の配達をこなしながら、地元消防団第二分団の団員として9年間、火災や水害の現場に駆けつけてきた。亡き父が42年続けた店を畳んでからの空白を、自分の手で埋め直すつもりだった。

改装費は約110万円。貯金と、妻の理恵さん(33)のパート収入を切り崩して工面した。「店だけでは食べていけないのは分かっている。でも父の店の看板を、このまま朽ちさせたくなかった」と純平さんは話す。文具店の月商は開業から3週間でおよそ3万5千円。配達の稼ぎを合わせても、手取りは月14万円台にとどまる。

開業9日目の夜、弥生小路から200メートルほどの民家でぼやが発生し、純平さんの携帯電話に招集の連絡が入った。店のシャッターを半分下ろしたまま現場へ走り、火は30分ほどで消し止められたが、その間に予定していた配達16件のうち5件をこなせなかった。代役を探す時間もなく、後日、委託先の地域統括を務める沢渡雅之さん(52)から届いた通知には「当日の欠配は契約上、原則ご本人による代替手配をお願いしている。次月の配車数を調整させていただく」とだけ記されていた。「命がけで火を消しに行ったのに、その埋め合わせは自分でどうにかしろと言われる」と純平さんはうつむいた。

弥生小路商店会長の早乙女宗一さん(68)は「純平くんの店に灯りがついただけで、路地の空気が変わった」と歓迎しつつも、「地域を守っている人間の暮らしを、地域自身が支えられていないのはおかしい」と漏らす。妻の理恵さんも「出動のたびに収入が削られると分かっていて、いつまで続けられるのか」と表情を曇らせた。

若葉大学の蔵本祐子教授(労働経済学)によると、総務省の2025年労働力調査で非正規雇用労働者は2100万人を超え、雇用者全体の36.9%を占める。「業務委託という『個人事業主』の形は労災補償や休業給付の枠外に置かれやすく、消防団活動のような公的な役割との両立を支える制度は、全国的にまだ谷間にある」と蔵本教授は指摘する。

シャッターに手をかけたまま、純平さんはしばらく黙り込んだ。「地域のために出た日の分は、いったい誰が埋めてくれるんですかね」。その問いに、まだ誰も答えを持っていない。」

3年ぶりに営業再開した文具店の店主が、平日は個人事業主のドライバーとして配達をしながら消防団員も9年続けている、という記事を読んだ。開業9日目にぼやで出動した際、欠配になった分は「原則ご本人による代替手配をお願いしている」と通知が来た、というくだりに、正直ちょっと腹が立った。

「命がけで火を消しに行ったのに、その埋め合わせは自分でどうにかしろと言われる」という言葉、業務委託という働き方の隙間がそのまま出てる気がする。