引越しの荷ほどきもだいぶ進んだ。筆者は数百枚のレコードがぴたりと収納出来る頑丈な棚を所有している。今回ははその棚も実家から持参しレコードを収納した。こんな風にレコードを出しておくのは10年振りのことだ。本棚に収まらない大判の画集などを収納するのにも都合よい。その棚に入れておいた書籍や小物も一緒に持って来たのだが、その中にあるレコードが入っていた。

それは78年にABCレーベルから発売された Steely Dan のベスト盤だ。中学生の筆者がわざわざ東京に出て新宿でレコードを漁っている時にこんなベスト盤が出ているのか！と偶然発見し狂喜した2枚組だ。事情（近日開陳予定）があってレコード棚の装飾品となり、それ以来40年以上筆者のレコード棚を飾ってきた。当時既に廃盤で探し回った挙句にようやく2セット目を手に入れた宝物だ。

名曲の多い Steely Dan にレコード2枚でベスト盤を作るのはそもそも無理な注文なのだが、それまでに発表したアルバムからバランス良く選曲されている。あの曲が入ってない、この曲が入ってないという楽しい物議をかもしたに違いない。ジャケットはなんとも形容しがたい抽象イメージで趣がある。中面はモノクロのイカしたイメージだ。素っけなくクレジットされたミュージシャンのリストには大物セッションミュージシャンの名がキラ星のごとく並ぶ。

彼らの初期の楽曲を聴く時にはこの曲順のこの曲間でないと違和感を覚えるほど聴き込んだ。もともとレコードとは塩化ビニールに物理的に音響の溝を刻み込んだものだが、どうやら筆者の耳、身体にも同様の溝が刻み込まれてしまったようだ。今また彼らのベスト盤を気に入ったシステムで聴く。悦に入るとはこのことだ。もし筆者の音楽センスが良いとすれば彼らのおかげに他ならない。

Greatest hits Steely Dan 1978