タイトル
キングダム/見えざる敵(原題:The Kingdom)
概要
2007年のアメリカ/ドイツ/UEA合作映画
上映時間は110分
あらすじ
サウジアラビアの首都リヤドで外国人居住区が襲撃されるテロが発生し、100名以上が犠牲となった。FBIのロナルド・フルーリーはサウジアラビア入りを何とか取り付け、現地の警察の監督下で捜査を開始しようとするが…。
スタッフ
監督はピーター・バーグ
音楽はダニー・エルフマン
撮影はマウロ・フィオレ
キャスト
ジェイミー・フォックス(ロナルド・フルーリー)
ジェニファー・ガーナー(ジャネット・メイズ)
クリス・クーパー(グラント・サイクス)
ジェイソン・ライトマン(アダム・レビット)
アシュラフ・バルフム(ファーリス・アル・ガージー)
ジェレミー・ピヴェン(デーモン・シュミット)
リチャード・ジェンキンス(ロバート・グレイス)
フランシス・フィッシャー(エレイン・フラワー)
ダニー・ヒューストン(ギデオン・ヤング)
カイル・チャンドラー(フラン)
感想
1996年に発生したホバル・タワー爆破事件と2003年に発生したリヤド居住区爆破事件、2004年に発生したコバール虐殺を基に製作されたフィクション映画。評価は分かれ、興行収入は約8,600万ドルと製作費をわずかに上回る程度にとどまった。
後にピーター・バーグ監督がマーク・ウォールバーグと組んで製作する「ローン・サバイバー(2013)」「バーニング・オーシャン(2016)」「パトリオット・デイ(2013)」といった実話路線に通づる作品。
ラストでフルーリーは仲間が死んだことで涙を流すメイズに耳打ちしたその内容を明らかにする。「奴らを皆殺しにするぞ」と言ったのだと。そしてサウジアラビアのアブ・ハムザが孫に「皆殺しにしてやる」と言ってその言葉を孫が復唱している。復讐の連鎖が終わらないことを暗示して映画は終わる。
冒頭にアメリカとサウジアラビアの関係を示す映像が流される。そこで表示されるグラフに飛行機が突っ込んでいくという2001年アメリカ同時多発テロを思わせるアニメーションでその映像は締めくくられる。突然ある日気が狂ったように戦争を始めたりテロを起こしたりするのではない。その前段階として必ず何かはあり、何かの歴史の延長線上で起こっていることなのだ。
しかも、それは個人的な負の感情と連動するわけで、味方を殺された復讐なんて戦争の最たる要因だ。現地にいたフランが犠牲にならなければフルーリーだって無茶をしてサウジアラビア入りなんてしていなかったはずだ。また、アメリカのメンツ的にも「味方が殺されたのに黙っていられない」わけだ。
事実上、上司の命令を無視してアメリカ入りを果たす4人。彼らを監視する役目は現地警察のアル・ガーシーが務めることになる。彼の指示を無視して4人があちこち動き回る様子はやはり世界の警察としてアメリカが各地の戦争や紛争に口出ししている様子と重なる部分はある。
また、サウジアラビアの警察としても警察の制服を着用した男たちがテロ行為を行ったことに当然怒りを覚えているはずだ。ところがアメリカからやって来たFBIによって犯人は現地の人間、つまりアル・ガーシーと同郷のサウジアラビア人であることが濃厚になってくる。さらには招待された宮殿で、フルーリーはテロリストがサウジアラビア人であり、それを突き止めたのがアル・ガーシーだと彼の手柄にしたことで彼らを味方に付けることに成功する。ベタながら、FBIがサウジアラビア入りを果たす際などの交渉の仕方は学びがあるとは思うな。
いざサウジアラビア入りを果たしてもなかなか物事が先に進まぬもどかしさはあるものの、いざ歯車が回り始めると割と核心に近いところまで早々に辿り着く印象がある。これは推測だが、当初の編集が2時間半程度あったそうなので、削った40分ほどの映像の中にこの辺りの物語が残っているのかもしれない。
アメリカ大使館のシュミットの命令でアメリカへの帰国が決まった後、彼らの乗る車が敵からの襲撃を受ける。そこでレビットが誘拐されたことを受け、フルーリーらはレビットの救出に向かうことになり、ここから本格的なアクション映画と化す。銃撃戦に定評のあるマイケル・マンがプロデューサーであることも影響してか、ここからのアクションシーンはなかなかの見応えがある。銃や手投げ弾だけでなくRPGまでもが登場しアクションシーンを盛り上げる。
レビットを救出し、アブ・ハムザの元へ向かうと、彼の孫がアル・ガーシーを銃で撃ってしまい、彼はフルーリーの腕の中で絶命する。冒頭でアメリカ人など多くの犠牲者が出たものの、その捜査でやって来たアメリカ人4人は全員命を奪われることなく、同郷のサウジアラビア人同士で殺してしまったのだ。ここで理解しあえてきたアル・ガーシーだけが死んでしまうのはやや作為的に見えてしまうものがある。
戦争やテロが連鎖する歴史を体現するかのような映画でありながら、アクションシーンはしっかり娯楽作として盛り上げてくれる。キャストも軒並み好印象だが、当初の編集から削られた40分に作品をもっと重厚にする何かが隠されていた気がしてならない。
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予告編
吹替情報
・ソフト版
ソフト関連
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言語
├オリジナル(英語/アラビア語)
├日本語吹替
音声特典
├ピーター・バーグ(監督)による音声解説
映像特典
├未公開シーン
├高速道路シーンの制作
├メイキング・オブ・「キングダム」
├任務調査ファイル
