【作品#0964】シベリア超特急(1996) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

シベリア超特急

 

【概要】

 

1996年の日本映画

上映時間は90分

 

【あらすじ】

 

1941年。シベリア超特急内で次々に人が姿を消し、車掌まで殺される事件が発生した。たまたま乗り合わせた山下奉文陸軍大将は佐伯大尉、青山一等書記官とともに事件解決に乗り出す。

 

【スタッフ】

 

監督/脚本/製作は水野晴郎(MIKE MIZUNO名義)

音楽は安藤庄平

撮影は荒川鎮雄

 

【キャスト】

 

水野晴郎(山下奉文陸軍大将)

かたせ梨乃(李蘭)

菊池孝典(青山一等書記官)

西田和昭(佐伯大尉)

 

【感想】

 

映画評論家の水野晴郎が「落陽(1992)」で演じた山下奉文役を主人公に自ら監督/原作/脚本/製作/主題歌の歌詞を担当した意欲作。低予算のB級映画であり、映画の評価も決して高くないが、一部ファンから熱狂的な支持を得ており、合計5作品が製作されるに至った。

 

本作はどっからどう見ても映画の質はかなり低いんだが、愛すべき要素は確実にある映画である。映画をこよなく愛する水野晴郎のその映画愛は確かに伝わってくるのだ。

 

下記の音声解説でも語っているが、とにかくオマージュの嵐。言われなければ気付かないものから、「これって〇〇のパクリやん」とはっきり分かるものまで多数ある。もちろんオマージュがたくさんあれば映画愛があるってわけでもないのだが、「こういうのがやりたかったんだな」というのは伝わってくる。本来なら「そんなことしたら逆効果ですよ」と言いたくなることも恥ずかしげもなくやるんだからある意味凄い。

 

本作の質の低さは冒頭から。油井昌由樹によるナレーションの時点ですでに怪しい。撮り直しが必要だろうと思うような甘噛みとも取れる箇所や若干聞き取りづらい箇所がいくつもあるのだが、おそらく低予算の関係だろう、そのままにされている。冒頭のナレーションで違和感を覚えたら話が入ってこない。

 

そして、わざとらしい登場人物紹介の映像のもと、次々にシベリア超特急に乗客が乗り込み、監督自ら演じる山下奉文陸軍大将も満を持して登場する。棒読みを体現したようなキャラクターであり、下記の音声解説では「山下大将はこんな人だったと」水野晴郎は語っている。音声解説では「嘘つけ」と言いたくなるような空気感で話していないのでもはや照れ隠しでもないのかもしれない。

 

そんな水野晴郎と彼の右腕でもある西田和昭と共にどちらが演技が下手かを競っているかのようである。佐伯大尉を演じた西田和昭にはクライマックスに大芝居の場面があるのだが、コントレベルの絵面に素人の長台詞と泣き演技までやらせるとは。水野大先生も片腕の西田和昭にキツいことやらせるなぁ。

 

他にも演技レベルの酷い俳優もいるにはいるが、それらが際立つのもかたせ梨乃や菊池孝典といったちゃんと演技できる俳優がいるからだろう。特に彼らと一緒に演技をしなければならない場面では水野晴郎や西田和昭の演技はもはや残酷に見える。海外映画の日本語吹き替えで一人だけタレントが混じって違和感を覚えることがあるが、それなんかよりよっぽど酷いレベルである。それを監督自ら演じているんだからもはや凄い。

 

それからストーリーも悲惨である。次々に乗客が姿を消し、山下大将がちょっとしたヒントから次々に事件を解決していくのだ。その時点で上映時間は75分頃である。あと15分あるんだが、それは冒頭に「クレジットが出たあとにある事が二度起ります」という文章が表示されるのでそれが始まるのだ。

 

何が起こるかは書いてしまうのも面倒だが、どんでん返しというのもおこがましい臭い芝居が始まるのだ。それを見て、「なるほど」と膝を打つこともないし、「そう来たか」と驚くこともない。ただでさえ酷いもんを見せられているのに、残りの15分も一体何を見せられているのかという達観した気分になる。

 

駄作なんてこの世に数えきれないほど存在する。その駄作でもどうしようもないものと愛すべきものがある。本作は確実に後者だろう。

 

【音声解説】

 

参加者

├水野晴郎(監督/出演)

├西田和昭(出演)

 

上記2名による対話形式の音声解説。2002年という言葉が出てくるので、DVD発売に伴い収録されたものと思われる。

 

2002年の時点で本作はとっくにB級映画として認識されており、それについても彼らは堂々と語っている。この音声解説では水野晴郎が影響を受けた映画について数多く語っており、アルフレッド・ヒッチコックを中心に、吉村公三郎、市川崑などの話が度々登場し、その映画愛は十二分に伝わってくる。

 

他にも、冒頭のクレジットの意図、演じた俳優の魅力、撮り直した場面、カメラアングルの拘りなどなど、止まることなく語ってくれる。

 

また、編集の助言をくれた市川崑監督から撮影現場で「電車が揺れていないじゃないか」と指摘されるも撮影が進んでいたためにその演出ができなかった話は聞けるし、西田和昭は水野晴郎の演技を「見事な棒読みですね」と散々いじり続けるも、水野晴郎は「こういう人だったんです」と真剣に話しており、噓か本当か分からぬところも微笑ましい。

 

【関連作品】

 

「シベリア超特急(1996)」…シリーズ1作目

「シベリア超特急2(2001)」…シリーズ2作目

「シベリア超特急3(2003)」…シリーズ3作目

「シベリア超特急4(2003)」…シリーズ4作目※舞台版

「シベリア超特急5(2005)」…シリーズ5作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(日本語/英語)

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(日本語/英語)