【タイトル】
コーチ・カーター(原題:Coach Carter)
【概要】
2005年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は136分
【あらすじ】
リッチモンド高校は周囲の治安の悪さから大学へ行く者は少なく、卒業しても犯罪者になる者が多かった。そのリッチモンド高校のバスケ部へOBのケン・カーターがコーチとして赴任し、部員との間にとある契約を結ぶのだが…。
【スタッフ】
監督はトーマス・カーター
音楽はトレヴァー・ラビン
撮影はシャロン・メール
【キャスト】
サミュエル・L・ジャクソン(ケン・カーター)
ロブ・ブラウン(ケニヨン)
ロバート・リチャード(ダミアン)
リック・ゴンザレス(クルーズ)
ナナ・グベウォニョ(ジュニア・バトル)
アントウォン・タナー(ワーム)
チャニング・テイタム(ライル)
【感想】
1999年に実際に起った出来事を元に映画化された本作は、チャニング・テイタムの映画デビュー作となった。また、主人公ケン・カーター本人は映画化に際して自身を演じるべき人物としてサミュエル・L・ジャクソンを挙げており、撮影現場に毎日顔を出していた彼をしてサミュエル・L・ジャクソンの描写は98.5%正確だったと語っている。
割と万人に勧めできる手堅い作品。大人たちとっても子供たちにとっても視野を広げる契機となる作品になっている。「彼らにはバスケットボールしかない」という校長や保護者たち、「俺達にはバスケットボールしかない」という子供たち。専門職の人たちがよく言いがちな言葉だが、決してそんなことはない。確かにそう思う気持ちが強ければ強いほど、その分野で秀でた人材になるのかもしれないが、人生を歩んでいればたとえバスケットボールが大好きでそればかりやっていたとしても、それ以外の時間だってたくさんある。
コーチ・カーターはそれを理解し、あくまで学生である部員たち相手にある一定水準以上の学校の成績、授業では最前列に座ること、試合の日にネクタイとジャケット着用を要求し、それを契約書を通じて約束する。そしてそれが守られないとなれば体育館を封鎖して部活動を中止し、予定されていた試合も棄権することになる。これには部員だけでなく、校長ら学内の関係者、保護者、そして地元住民からも反対される。「彼らにはバスケットボールしかない」として。
この部員の中にはバスケットボールで大学を目指す者、プロを目指す者も含まれている。大学だって単位数が足りなければ卒業できないし、プロになればチームだけでなくスポンサーなどとの間に守らなければならない多数の条項が記載された契約が待っている。カーターと部員との間で結んだたったこれだけの契約を守ることができなくて、大学やプロで通用するのかという話である。そのスポーツの才能に恵まれながら問題を起こしてその将来を潰してしまった若者はいくらでもいる。
またたとえ才能に恵まれてもプロになれるのはほんの一握りである。この部員のほとんどはプロにならずに別の道に進むことになるはずだ。そして場合によってはカーターが言っていた統計通りに3人に1人は刑務所行きになるかもしれない。そんなことにならないようにという思いでこの仕事を引き受けたカーター。せめてこの部員たちだけでも正しい道に進んでくれることができれば御の字である。仮に正しくなくても間違っていなければ最低限の結果は得られるはずだ。
カーターひとりが頑張っただけでは町全体が変わることなんて到底無理な話である。ただ、本作を見た観客の一人一人が少しずつでも行動を変えていけばきっといい方向に進んでいけると信じられる作品である。
そんな本作の主人公カーターを「お説教」でお馴染みのサミュエル・L・ジャクソンが演じている。コーチ役なんてまさにうってつけの役である。その「お説教」の話しぶりも迫力もまさにサミュエル・L・ジャクソンなわけだが、それが良い。また、部員たちを演じた若者も「いかにも」な雰囲気があって良い。この中から俳優として大成したのはデビュー作になったチャニング・テイタムくらいだが、若者故の勢い、また若者故の未熟さがそれぞれ表現されていたように思う。
いやぁ、ケン・カーターはサミュエル・L・ジャクソン以外に考えられないな。いつもの彼とそんなに変わらないが、何かを教える役、人の上に立つ役はまさに十八番。メディアや地元住民が彼と反対の立場をとる分かりやすい二項対立が過ぎる印象こそあるが、鑑賞後に清々しい気分になれる良作。
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【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD(スペシャル・コレクターズ・エディション)>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├コーチ・カーター その実像を探る
├リッチモンド高の技
├削除シーン
├ミュージックビデオ